弁護士に将来性はある?食えないといわれる理由やAIの影響も解説
この記事では、弁護士に将来性について「食えない」といわれている理由を解説します。
弁護士は幅広い独占業務を担う専門性の高い職業です。
一方で、平均年収の減少やAIの進出により、弁護士の将来性について心配している人も少なくありません。
この記事では、AIの進出によって弁護士の将来性がなくなるのかや、活躍するためのポイントも解説していきます。
弁護士の将来が気になる方人は、ぜひこの記事を最後までお読みください。
- 弁護士が「将来性がない」「食えない」といわれる理由
- 【結論】弁護士に将来性はあるのか
- AIの進出によって弁護士の将来性はなくなるのか
- 弁護士として将来的に活躍するためのポイント
- 弁護士に将来性は十分あるといえる
弁護士が「将来性がない」「食えない」といわれる主な理由
ここでは、弁護士が「将来性がない」「食えない」といわれる主な理由を4つ紹介します。
前提として、上記の理由が背景にあるからといって弁護士業界に将来性がないとは一概に判断できません。
情報を取捨選択し、適切に判断することが重要です。
- 平均年収が減少傾向にあったから
- 司法制度改革によって弁護士数が増加しているから
- 予防法務の需要が増加しているから
- 司法試験の合格者が減少傾向にあるから
平均年収が減少傾向にあったから
理由の1つ目は、弁護士の平均年収が減少傾向にあったからです。
2018年の日本弁護士連合会の資料によれば、弁護士の収入・所得の平均値・中央値は以下のように推移しています。
<弁護士の収入・所得の平均値>
2006年 |
2008年 |
2010年※ |
2014年 |
2018年 |
|
収入 |
3,620万円 |
3,389万円 |
3,304万円 |
2,402万円 |
2,143万円 |
所得 |
1,748万円 |
1,667万円 |
1,471万円 |
907万円 |
959万円 |
※2010年のみ弁護士活動以外の収入も含む
※参考:近年の弁護士の実勢について(弁護士実勢調査と事件動向調査を元に)|日本弁護士連合会
2006年から2018年の12年間で、平均収入は約1,500万円、平均所得は約800万円減少しています。
このように、収入の減少が「弁護士に将来性がない」といわれる背景だといえます。
司法制度改革によって弁護士数が増加しているから
2000年頃の司法制度改革以降、弁護士の数が増加していることも、将来性がないといわれる理由の1つです。
2004年から、法科大学院(ロースクール)が開校されました。法科大学院は質の高い法律家を養成するための教育機関で、課程の修了者には司法試験の受験資格が与えられます。
法科大学院が開校した2004年以来、以下の表のように弁護士数は増加しています。
1994年 |
2004年 |
2014年 |
2020年 |
|
弁護士数 |
14,809人 |
20,224人 |
35,045人 |
42,164人 |
※参考1:弁護士白書 2020年版|日本弁護士連合会
※参考2:法科大学院/ロースクールとは|伊藤塾
開校以前は10年で約6,000人の増加でした。
一方、2004年の開校以降は10年で約15,000人も増加しており、弁護士数は大幅な増加傾向にあるといえます。
一般民事全般を扱う弁護士の競争が激化し、個々の弁護士が仕事を獲得することが困難になっている面が背景にあります。
この記事では、弁護士の集客方法について解説します。 弁護士数が増加を続けるなかで、他の弁護士事務所との差別化を図るためにも、Webなどを活用した集客を実施することがポイントです。どのような集客方法があるのかを把握しておけば、より効率的に新[…]
訴訟案件が減少しているから
訴訟案件が減少したことも、弁護士に将来性がないといわれる理由の1つです。
裁判所の資料によると、地方裁判所における民事第一審訴訟事件の新受件数は、以下のように推移しています。
グラフから、過去10年間で新受件数は6万件程度減少していることがわかります。背景として、予防法務(※1)や代替的紛争解決手段(※2)などの普及で法的問題が未然に防がれ、裁判に至らないケースが増えたためです。
このように、仕事内容の変化によって「将来性がない」といわれる要因の可能性があります。
ただし、これらは市場の需要が変化しているだけであり、弁護士としての役割がなくなっているわけではない点に注意が必要です。
※1:企業が法的な問題を未然に防ぐ、あるいは法的紛争が生じた場合でも損失を最小限に抑えるために、あらかじめ適切な法的措置をとること。
※2:裁判によらず公正、かつ中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図ること。「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の頭文字をとって「ADR」ともいう。
※参考1:予防法務とは|行政書士よこやま法務事務所
※参考2:ADRとは?|公益社団法人 民間総合調停センター
司法試験の合格者が減少傾向にあるから
司法試験合格者数が近年、減少傾向にあるため「将来性がない」と思われがちです。
日本弁護士連合会の資料によると、司法試験の合格者は以下のように推移しています。
<司法試験の合格状況>※2011年以降から一部抜粋
2011年 |
2012年 |
2013年 |
2014年 |
2021年 |
|
出願者数 |
11,891人 |
11,265人 |
10,315人 |
9,255人 |
3,754人 |
受験者数 |
8,765人 |
8,387人 |
7,653人 |
8,015人 |
3,424人 |
合格者数 |
2,063人 |
2,102人 |
2,049人 |
1,810人 |
1,421人 |
※参考:弁護士白書 2021年版|日本弁護士連合会
※数値は総数
上図や表からわかる通り、司法試験の合格者数は2007年から2013年頃までの間で大きく増加したものの、翌年の2014年から2021年にかけて減少傾向です。特に、合格者数が2011年の2,063人に対して、2021年は1,421人と約600人減少していました。
このような背景から、司法試験合格者が減少したため新規の弁護士登録者数も減っているといえます。
その結果、「弁護士になる人が少ない=弁護士に将来性がない」と認識されていると推測されるでしょう。
ただし、新司法試験制度の導入前となる2005年と比較すると、2021年の合格者数はほとんど変動はありません。
そのため、合格者数が増加傾向にあった期間は、2006年における新司法試験制度の導入が大きく影響しているとわかります。
【結論】弁護士に将来性はあるのか
結論として、弁護士には将来性が十分にあります。理由として、以下の4つが挙げられます。
順番に解説していきます。
- 弁護士の独占業務が幅広い
- 好景気・不景気に左右されない
- 企業法務やインハウスローヤーの需要が増加している
- 弁護士向けのさまざまな働き方が導入されている
弁護士の独占業務が幅広い
弁護士は、特定の業務を独占的に行える職業だといえます。
例えば、法的トラブルが起こった際には、弁護士だけが裁判所での代理人として活動可能です。
また、契約書の作成や法的助言など、専門的な法律サービスを提供することも弁護士の重要な役割です。
幅広い独占業務があることは、市場での需要が常に一定数あることを意味しています。
好景気・不景気に左右されない
弁護士の仕事は、経済状況に左右されにくい特徴があります。
例えば、不景気のときは企業の倒産や労使間のトラブルが増え、弁護士の需要が高まります。
逆に、好景気のときは企業活動の増加に伴い、契約関連や顧問依頼などの業務が増える傾向にあります。
経済の変動にかかわらず一定の需要が見込まれるため、弁護士の将来性は十分にあるといえるでしょう。
企業法務やインハウスローヤーの需要が増加している
企業法務の分野や、インハウスローヤー(企業内弁護士)の需要が近年増加している背景からも、弁護士の将来性があるといえます。
増加している理由は、社会の成熟とともに法令遵守の必要性が高まり、企業が法的リスクを事前に管理しようとする傾向が強まっているからです。
企業内での法的なアドバイスや契約の管理など、企業法務に関わる業務は弁護士の新しい活躍の場として注目されています。
弁護士向けのさまざまな働き方が導入されている
弁護士の働き方が多様化していることも、将来性があるといえる理由の1つです。
従来の法律事務所での勤務だけでなく、企業のインハウスローヤーやフリーランスとしての活動、あるいは非営利組織での業務など、選択肢は広がっています。また、弁護士に囚われず、知識を活用し製品やサービスを生み出す側に回る選択肢もあります。
弁護士として勤務した経験を生かし、弁護士の負担を軽減し働きやすい環境づくりに貢献するのも働き方の1つです。
働きやすい環境づくりを構築するためには、日々の業務を効率化することが重要です。例えば、クラウド業務管理システムを導入すれば、業務効率化だけでなくセキュリティ強化にもつながります。
LEALA(レアラ)は、LEALAは、数百名規模から数名規模の法律事務所まで幅広くご採用いただいている、弁護士業務を効率化する業務管理システムです。世界各国の政府系機関や大手金融機関等も利用している”Salesforce”をシステム基盤に採用することで、堅牢なセキュリティ環境のもとで情報を管理することが可能です。
機能面では、タイムチャージ管理から請求書の発行・送付までを一元化できる企業法務系機能と、顧客・案件管理からタスク・会計業務などを効率化する一般民事系機能のどちらも搭載しているため、分野や規模問わず全国様々な法律事務所に導入いただいています。
弁護士業務を効率化させ、働きやすい職場環境づくりに取り組みたい方は、ぜひレアラのクラウド業務管理システムの導入をご検討ください。
AIの進出によって弁護士の将来性はなくなるのか
結論として、AIの進出による弁護士の将来性への影響は少ないといえます。
ここでは、弁護士の業務におけるAIの役割や、将来性への影響が少ないといえる理由を解説します。順番に見ていきましょう。
- AIは主に業務改善に特化している
- 弁護士業務の専門性をAIでは代替できない
AIは主に業務改善に特化している
そもそも、AIはあくまで時間がかかる事務作業やデータ分析などの業務改善に特化しています。
例えば、文書のリーガルチェックや契約書の作成支援、過去の判例の検索などの業務効率化が挙げられます。
AIの進出は、弁護士業界にとって業務の改善にはつながるものの、すべてをAIで完結できるわけではありません。
したがって、弁護士がAIを仕事に活用することはあっても、将来性が失われる直接的な要因にはならないでしょう。
むしろ、弁護士はより専門的な業務に集中できるようになるので、クライアントへ質の高いサービスが提供できるきっかけになります。
弁護士業務の専門性をAIでは代替できない
前述の通り、弁護士業務の専門性をAIでは代替できないため、将来性への影響が少ないといえます。
以下のような、人間特有の判断力や感情を必要とする業務はAIでは完結できません。
また、法律の解釈や応用には深い知識と経験が求められ、AIの能力を超えた分野になっています。
AIは弁護士の専門性を補完する形で利用されることが主であり、弁護士の役割がなくなることはないといえます。
- クライアントとのコミュニケーション
- 個々のケースに合わせた戦略の立案
- 法廷での弁論
弁護士として将来的に活躍するためのポイント
ここでは、「将来性がない」「食えない」という意見が飛び交う近年において、弁護士として将来的に活躍するためのポイントを3つ解説します。
順番に見ていきましょう。
- コミュニケーションスキルや営業力を身につける
- 専門性を強化する
- 業務効率化を意識する
コミュニケーションスキルや営業力を身につける
弁護士として活躍するために、コミュニケーションスキルや営業力を身につけましょう。
クライアントと信頼関係を築き、ニーズを正確に理解する能力は弁護士にとって非常に重要です。
また、新しいクライアントを獲得するための営業力も、独立して活動する弁護士には特に求められます。
専門性を強化する
専門性を高めることも、弁護士として成功するための重要なポイントです。
特定の法律分野に関する深い知識と経験を持つことで、クライアントと信頼関係を築くことにつながります。
専門性を高めるためには、弁護士になってからも勉強し続けることや、特定の分野のケースに焦点を当てて研究を深めることが効果的です。また、専門分野に関連するセミナーやワークショップに参加することも有効な手段といえます。
業務効率化を意識する
業務効率化は、時間管理と仕事の生産性を向上させる重要なポイントです。
AIやデータベースなどのテクノロジーを利用すれば、文書管理やリサーチの時間を削減できます。さらに多くの時間を戦略立案や法廷業務に費やせれば、クライアントへ高い価値を提供できるようになります。効率的に業務を行う力を身につければ、弁護士としての競争力が高まり、より多くのクライアントにサービスを提供する機会が得られるでしょう。
業務効率化で悩んでいる人は、クラウド業務管理システムなどの導入がおすすめです。
案件ごとに依頼者情報やメール・通話などの活動記録、ファイルや会計情報などを自動的に紐付づけて管理できるため、システムにログインさせすれば案件の進捗状況が把握でき、所内全体での情報共有・確認を容易にします。
また、案件情報に紐づけてチャットでコミュニケーションができるため、各案件に関する過去のスレッドにも素早くアクセスできます。
法律事務所の業務効率化と業務品質の向上のどちらも実現できる、レアラのクラウド業務管理システムをぜひご検討ください。
弁護士に将来性は十分あるといえる
この記事で解説したように、弁護士には十分な将来性があります。企業法務の増加やAIの進出によって弁護士の仕事を取り巻く環境は変化しており、高い営業力や専門性を身につければ活躍する機会が十分にあるといえます。
また、弁護士として活躍するためには、前述の通り業務効率化が重要です。AIの活用やクラウド業務管理システムの導入を検討しつつ、弁護士としてのスキルを高めていきましょう。