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インボイス制度による弁護士・法律事務所への影響は?収入の変化も解説

インボイス制度による弁護士・法律事務所への影響は?収入の変化も解説

この記事では、インボイス制度による弁護士や法律事務所に対する影響を解説します。
2023年10月に始まったインボイス制度は、弁護士・法律事務所の対応にも影響します。しかし、まだ制度について把握しきれておらず、いま実施している対応が合っているか不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では、インボイス制度による弁護士の収入の変化や必要となる対応、注意点を解説します。インボイス制度に対する理解を深めたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

 

税理士法人みずほ 公認会計士・税理士

八幡 浩伸 先生

2009年7月に財務会計系コンサルティング会社に勤務し、オーナー企業の事業承継・相続コンサルティングを中心に活動。2019年1月に税理士法人みずほパートナー社員に就任。2020年1月には、弁護士や共同事務所の特徴を踏まえた会計/税務をわかりやすく解説した書籍『Q&Aでわかる!! 弁護士事務所の正しい会計・税務<第2版>』を第一法規㈱から出版。

  • 弁護士にも影響するインボイス制度の基礎知識
  • インボイス制度による弁護士・法律事務所への影響
  • インボイス制度によって必要となる一般的な対応・注意点
  • 弁護士やインボイス制度に関するよくある質問
  • 弁護士にも影響するインボイス制度は事前準備が重要

 

 

弁護士にも影響するインボイス制度の基礎知識

ここでは、弁護士にも影響を与えるインボイス制度について見ていきましょう。下記2点から、インボイス制度の基礎知識を解説します。

  • インボイス制度とは?
  • 適格請求書発行事業者とは?

 

インボイス制度とは?

インボイス制度は2023年10月から新たにスタートした消費税の申告制度で、正式名称は『適格請求書等保存方式』です。

そもそも”インボイス(適格請求書)”とは、クライアントに発行する請求書などに登録番号などの一定の事項を記載した書類を指します。売手が買手に向けて正確な適用税率や消費税額などを示すものであり、取引の日付や内容に加えて、税率ごとに区分された税率や税額が記載されています。インボイス制度の主な目的は以下の2点です。インボイス制度を理解するうえで、まずは基礎知識を把握しておきましょう。

  • 消費税を正確に計算できるようにすること
  • 免税事業者の益税をなくすこと

※参考1:インボイス制度の概要丨国税庁
※参考2:No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)丨国税庁

 

適格請求書発行事業者とは?

適格請求書(インボイス)発行事業者とは、税務署に登録申請し、登録されることで、インボイスの交付が可能となる事業者です。登録を受けられる事業者は課税事業者に限られます。

登録申請手続きをした事業者に対して税務署が審査を行い、登録が決定すると公表と登録簿への登載がされて、事業者に対して税務署から通知が来ます。通知される登録番号の構成は以下の通りです。

  • 法人番号を有する課税事業者の場合:T+法人番号
  • 上記以外の課税事業者(個人事業者や人格のない社団など)の場合:T+13桁の数字


適格請求書発行事業者として登録された事業者には、取引先となる課税事業者の求めに応じてインボイスを交付する義務が課せられます。また、交付したインボイスは写しを保存しておくことが必要です。
※参考:消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されます丨国税庁

 

 

インボイス制度による弁護士・法律事務所への影響

では、インボイス制度による弁護士や法律事務所への影響を確認していきましょう。下記3つのケースで与える影響について、それぞれ解説します。

  • 課税事業者の場合
  • 免税事業者の場合
  • 共同事業者の場合

 

課税事業者の場合

課税事業者とは、国内で課税資産の譲渡や特定課税仕入れを行った事業者のなかで、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者のことです。弁護士も、年間の売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者に該当します。

インボイス発行事業者の場合、インボイス制度に基づいて取引先に求められた際にインボイスを発行し、その写しを保管しておく必要があります。保管期間は、インボイスを交付(提供)した日が属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月経過した日から7年間です。
インボイス発行事業者の場合、インボイスの発行や管理の手間が増えて負担が大きくなるといえます。
※参考1:No.6125 国内取引の納税義務者丨国税庁
※参考2:5 適格請求書等の写しの保存丨国税庁

 

免税事業者の場合

免税事業者は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下で、課税資産の譲渡や特定課税仕入れなどに対する納税義務が免除される事業者のことです。

先述の通り、インボイスの発行は課税事業者のみであり、免税事業者はインボイスを発行できません。そのため、免税事業者に該当する弁護士の場合、課税事業者に変更して適格請求書発行事業者となり消費税の申告・納税を行うか、免税事業者のままで消費税の申告・納税を行わないのか、いずれを選択するのか検討する必要があります。

免税事業者であるアソシエイト弁護士の場合、インボイス登録の有無によって、受け取る報酬額(キャッシュフロー)が異なります。インボイス制度導入により、業務委託されているアソシエイト弁護士と、業務委託している法律事務所(特に共同事務所)が支払う消費税の変化について、下記の例を参考に確認しましょう。
なお、法律事務所は消費税の原則課税事業者であることを前提としています。

<インボイス制度導入

項目

法律事務所

アソシエイト弁護士

年間報酬

▲880万円

880万円

消費税

80万円

キャッシュ・フロー

800万円

880万円

※▲は支払いによるマイナスを示す


インボイス制度導入前は、免税事業者であるアソシエイト弁護士の場合は年間報酬額に含まれている消費税を支払う必要はありませんでした。
一方、免税事業者であるアソシエイト弁護士に報酬を支払う法律事務所は、支払った報酬額に含まれる消費税をクライアントからの弁護士報酬に含まれる消費税から差し引いて、消費税を支払うことができます(この例では、80万円)。

次に、インボイス制度導入後の変化について確認していきましょう。

<インボイス制度導入・インボイス登録なしの場合>

項目

法律事務所

アソシエイト弁護士

年間報酬

▲880万円

880万円

消費税

キャッシュ・フロー

▲880万円

880万円

※▲は支払いによるマイナスを示す

インボイス制度導入後、免税事業者であるアソシエイト弁護士がインボイス登録をしない場合、アソシエイト弁護士は消費税を支払う必要はありません。しかし、法律事務所は免税事業者であるアソシエイト弁護士に支払う報酬に対して、インボイス導入前まで差し引けた消費税を差し引くことができなくなります。そのため、法律事務所は消費税(この例では、80万円)を負担しなければなりません。

法律事務所としては消費税の負担を軽減するために、免税事業者であるアソシエイト弁護士の年間報酬額にかかる消費税を差し引いた金額を支払う場合も考えられます(その場合、アソシエイト弁護士の年間報酬額は80万減)。

<インボイス制度導入・インボイス登録ありの場合>

項目

法律事務所

アソシエイト弁護士

年間報酬

▲880万円

880万円

消費税

80万円

▲40万円

キャッシュ・フロー

▲800万円

840万円

※▲は支払いによるマイナスを示す


一方で、免税事業者であるアソシエイト弁護士がインボイス登録をしている場合(簡易課税事業者の場合)、アソシエイト弁護士は新たに課税された消費税を支払わなければなりません(この例では、40万円)。したがって、インボイス導入前までに受け取れた報酬額よりも金額が少なくなります。
なお、法律事務所は、インボイス導入前と変わらず、支払った報酬額の消費税分を差し引くことができるため消費税の負担はありません。

このように、免税事業者であるアソシエイト弁護士の場合、インボイスの登録の有無によって受け取れる報酬額に差が生じる点に注意が必要です。ただし、仕入税額控除(※)の経過措置を利用した場合、免税事業者に対する支払いであっても、制度開始後3年間はその支払い消費税の80%、その後の3年間は50%の仕入税額控除が受けられます。
※仕入税額控除とは、弁護士報酬に含まれる消費税から支払った消費税を差し引く仕組み

【仕入税額控除の経過措置】

  • 令和5年10月~令和8年9月:80%
  • 令和8年10月~令和11年9月:50%


また、インボイス制度を機に課税事業者となり令和5年末までに適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、令和5年(10〜12月分)から令和8年までの申告に対して『2割特例』が適用されます。免税事業者から課税事業者に変更した人は、該当しているか確認することを推奨します。

※参考1:No.6501 納税義務の免除丨国税庁
※参考2:消費税インボイス方式への法律事務所の対応丨第二東京弁護士会
※参考3:インボイス制度とは丨国税庁
※参考4:インボイス発行事業者の「2割特例」適用可否フローチャート丨国税庁
※参考5:税理士法人みずほ八幡浩伸, 資料「法律事務所のためのインボイス制度攻略法」2023年6月1日

 

共同事務所の場合

複数の弁護士が経営する共同事務所がインボイスを発行する場合、取引のパターンによって取り扱いが異なります。下記の表で確認しましょう。

<インボイス制度導入・インボイス登録ありの場合>

パターン

取り扱い

  • 個別契約(※)
  • 委任契約などの契約を締結した弁護士がインボイスを発行
  • 共同受任
  • 収入按分
  • 契約を締結した弁護士全員が共同でインボイスを発行
  • 共同受任者のなかに免税事業者の弁護士がいる場合、共同でのインボイス発行が不可
  • 民法上の組合
  • 組合員全員が適格請求書発行事業者となったうえで、税務署に『任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書』を税務署に提出
  • いずれかの組合員名でインボイスの発行が可能

※それぞれの弁護士に収入が帰属する場合


また、共同事務所が共通経費の按分を行う際には、共同事務所の代表者が一旦支払い、『按分合意書』を用いてパートナー弁護士各自の経費額を確定する場合が多い傾向にあります。その場合、支払先から入手したインボイスは共同事務所で保存する必要があります。

なぜなら、原則課税事業者であるパートナー弁護士は、『按分合意書』で確定した経費額について仕入税額控除を受けられるからです。したがって、共同事務所は取引先や登録番号、税率ごとの消費税などインボイスの情報を記載した『経費帳』を作成して、原則課税事業者であるパートナー弁護士に交付することが望ましいでしょう。
このように、共同事務所の場合は、インボイスを発行する場合と入手する場合でそれぞれ対応が必要です。

※参考1:消費税インボイス方式への法律事務所の対応丨第二東京弁護士会
※参考2:税理士法人みずほ八幡浩伸, 資料「法律事務所のためのインボイス制度攻略法」2023年6月1日
※参考3:インボイス制度に関するQ&A(立替金)|国税庁

 

 

インボイス制度によって必要となる一般的な対応・注意点

ここでは、インボイス制度の導入によって必要となる対応や注意点を解説します。下記3点を順番に見ていきましょう。

  • クライアントへの対応・注意点
  • 支払先に対する対応・注意点(原則課税事業者の場合)
  • 支払先に対する対応・注意点(簡易課税事業者の場合)

※参考:税理士法人みずほ八幡浩伸, 資料「法律事務所のためのインボイス制度攻略法」2023年6月1日

 

クライアントへの対応・注意点

インボイス制度の開始に伴い、クライアントから要望があった際にはインボイスを発行する必要があります

まず、適格請求書発行事業者の登録申請をしましょう。税務署から登録番号の通知を受けたら、着手金や報酬金、法律相談料、顧問料などの収入形態ごとに何をインボイスとするのかを決めて、その様式を整備します。その後、要望があったクライアントに対してインボイスを交付します。その際、交付したインボイスの写しを申告期限から7年間保存することが必要です。

 

支払先に対する対応・注意点(原則課税事業者の場合)

原則課税事業者の場合、入手したインボイスは申告期限から7年間保存しておきましょう。インボイスの入手および保存をしていない場合、消費税負担が増大する恐れがあります。
また、入手したインボイスに従って、税率ごとに区分して帳簿に記載することが必要です。インボイスの入手が免除されている取引の場合は、帳簿にその旨を記載しておきましょう。

 

支払先に対する対応・注意点(簡易課税事業者の場合)

簡易課税事業者である場合、業種によって定められた”みなし仕入率”を用いて消費税を計算します。各業種におけるみなし仕入率は、下記の表の通りです。

事業区分

主な該当事業

みなし仕入率

第1種事業

  • 卸売業
90%

第2種事業

  • 小売業
  • 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る)など
80%

第3種事業

  • 鉱業・建設業・製造業など
70%

第4種事業

  • 飲食店業など

60%

第5種事業

  • 運輸通信業
  • 金融業・保険業
  • サービス業(飲食店業以外)など

50%

第6種事業

  • 不動産業

40%

※参照:No.6509 簡易課税制度の事業区分丨国税庁

上記の表を用いて事前に消費税を計算できるため、支払先からインボイスを入手する必要はありません
また、簡易課税より原則課税のほうが消費税が少なくなると考えられる場合には、原則課税の選択を検討することも可能です。

 

弁護士やインボイス制度に関するよくある質問

ここでは、弁護士やインボイス制度に関してよくある質問に回答します。下記3点を順番に見ていきましょう。

  • インボイスの入手不要な支払いは?
  • 消費税の原則課税事業者である弁護士がノートやボールペンを購入して支払った消費税も仕入税額になる?
  • アソシエイト弁護士の場合に消費税の申告は必要?

 

インボイスの入手不要な支払いは?

インボイスの入手不要な支払いとして、大きく2つが挙げられます。

(1)下記a~dの支払いは、インボイスを交付してもらう必要はありません。ただし、会計帳簿 (総勘定元帳など)にインボイス交付義務が免除されている取引である旨を記載する必要があるため注意しましょう。

【インボイス入手不要な支払い】

  • a、 3万円未満の自動販売機・自動サービス機(※ATMでの振込手数料も含む)
  • b、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、日当及び 通勤手当など
  • c、 3万円未満の公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送(※飛行機は含 まれない)
  • d、 郵便切手を対価とする郵便サービス (※郵便ポストに差し出されたものに限る)


(2)以下のどちらかの事業者に該当する場合は、支払対価が1万円未満(消費税込)の取引においてインボイスの入手・保存が不要です。ただし、上記は令和5年度の税制改正で定められた制度であり、令和5年10月1日〜令和11年9月30日までの6年間の取引に限定される予定です。

【対象となる事業者】

  1. 基準期間(前々の会計期間)における課税売上高が1億円以下の事業者
  2. 特定期間(前会計期間の上半期)における課税売上高が5,000万円以下の事業者

※参考:税理士法人みずほ八幡浩伸, 資料「法律事務所のためのインボイス制度攻略法」2023年6月1日

 

消費税の原則課税事業者である弁護士がノートやボールペンを購入して支払った消費税も仕入税額になる?

事業のために発生した経費は、仕入税額控除の対象です。そのため、弁護士が業務のためにノートやボールペンなどの事務用品を購入した場合、支払った消費税は仕入税額となります
仕入税額控除を受けるために、支払いの際に入手したインボイスは適切に保存しましょう。

 

アソシエイト弁護士の場合に消費税の申告は必要?

所属する法律事務所を通じ、給与としてのみ報酬を受け取っている場合、アソシエイト弁護士個人が消費税を申告・納税する必要はありません。一方で、業務委託報酬として受け取る場合には、基準期間の課税売上高1,000万円を超えた場合、課税事業者となるため消費税の申告と納税が必要です。
なお、インボイス発行事業者の場合には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも消費税の申告と納税が必要です。

 

 

弁護士にも影響するインボイス制度は事前準備が重要

この記事では、インボイス制度による弁護士や法律事務所への影響について解説しました。
インボイス制度による対応は、課税事業者か免税事業者、共同事務所かによって異なります。特に免税事業者の場合、課税事業者への変更や経過措置の利用など対策が必要です。インボイス制度の導入によって報酬が大きく減少することがないように、事前にしっかりと対策しましょう。

また、インボイス制度の導入によって、弁護士や法律事務所にはより複雑な業務管理が求められます。インボイス制度の対応のみならず、普段の法律事務所業務も効率化・仕組み化することが何より重要です。

法律事務所向けのクラウド業務管理システム『LEALA』は、タイムチャージ管理や会計管理、書類作成などの煩雑な業務を簡便化します。LEALAはインボイス制度の要件を満たした請求書発行機能も登載しており、登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額などを記載した、インボイス対応の請求書の出力が可能です。そのため、インボイス制度に伴う対応もスムーズに実施できるでしょう。

以下のページからLEALAに関する情報を入手できるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

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