公開日 2026/06/18 更新日 2026/06/18
法律事務所の集客を成功させるために整理したい3つのポイント【3C分析】
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。本シリーズでは、7回にわたって法律事務所の経営に役立つマーケティングの考え方を紹介していきます。前回はマーケティング視点について説明しました。第2回の今回はマーケティングの3C分析についてみていきます。
- 第1回 法律事務所の集客にマーケティング視点が必要な理由
- 第2回 法律事務所の集客を成功させるために整理したい3つのポイント【3C分析】 ←今回はここ
- 第3回 法律事務所の新規顧客を獲得するための集客施策3選
- 第4回 法律事務所のオンライン集客で意識したい2つのポイント
- 第5回 法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選
- 第6回 法律事務所の受任率を高める相談・商談に役立つマーケ視点3つのポイント
- 第7回 法律事務所の顧客維持を高める3つのコミュニケーション
マーケティング視点が身についてくると、他の法律事務所を含め、いろんな企業の広告や街を歩いている時に目に入る看板を見ては、これは誰に向けたものかな?なんでこんな表現をしているんだろうと、いろいろと気になってきます。気になることで集客方法の参考になったり、表現方法について学べることも多いでしょう。しかし、いざ自所の集客となるとどこから始めようかと考えてしまうかもしれません。今回は集客前に整理したい3つのことについて説明します。
- 相談者・依頼者を理解するポイント
- 競合を理解するポイント
- 自所の提供価値を整理するポイント
集客前に整理したい3つのこと(3C分析)
マーケティング視点を持って集客を行うためには、事前に整理しておきたい3つのことがあります。マーケティングでは、3C分析と呼ばれています。3Cとは以下のものです。
・顧客 (Customer Consumer)
・競合 (Competitor)
・自社 (Company)
3C分析は現状の整理をするために、使用されます。現状を整理、把握できないまま、施策を考え、実施すると、成功した時もうまくいかなかった時も、なぜそのような結果になったのかの要因をつかむのが難しいといえるでしょう。しっかりと現状を整理することで、結果の要因を理解し、効果を高めるための次の施策につなげることができます。時には、現状整理の際に異なった解釈をしていたということが施策の結果分析からわかるかもしれません。現状を整理することは施策を考える、実施する、結果を評価分析し、次の施策に生かすという流れには不可欠なことです。では、どういうことを整理すればいいのでしょうか。
法律事務所では、以下のように読み替えるとわかりやすくなるでしょう。
・顧客を知る→法律事務所の顧客(相談者・依頼者)を理解する
・競合を知る→法律事務所の競合は誰か?競合の集客方法を理解する
・自社を知る→自所の強みと提供価値を整理する
法律事務所が現状を整理するための3つのポイントについてそれぞれ説明します。
法律事務所の顧客(相談者・依頼者)を理解する
法律事務所にとって「顧客」は相談者・依頼者になります。相手が個人であっても、組織や企業であっても、考え方は同じです。
相談者・依頼者について理解、整理するうえでのポイントは3つ
- 相談者・依頼者はどのような人(企業)か
- どのような価値を求めているのか
- どのような場所・方法で情報収集をしているのか
それぞれについて説明します。
相談者・依頼者はどのような人(企業)か
まず、自所が対象とする相談者・依頼者(企業)はどのような人たちなのかを整理しましょう。個人であれば、年齢や性別、職業、家族構成、趣味・嗜好、企業であれば業種、事業規模、窓口となる部署などです。できるだけ詳しくどんな人なのか、企業なのかを整理することが大切です。所内の誰もが同じイメージを持てるまで詳細にしておくと、施策を考える際、所内でのディスカッションがしやすくなります。どんな人(企業)かがあいまいで各自のイメージに差異があると、施策の思案も実施後の評価も人によって異なり、何が要因で成功したのか、成功しなかったのかもわからなくなる可能性があります。人物像、企業像については、しっかりと整理しましょう。
どのような価値を求めているのか
次に、どのような課題、問題を抱え、どのように解決したいと思っているのか、求める価値について整理します。
相談者・依頼者には様々な人がいるのに、家族構成や企業規模など、どんな人・企業かなんて整理できないと思われるかもしれません。また、求めている価値も様々だと思うでしょう。一方で、人や企業の対象範囲を決めずに伝えたメッセージは、誰も自分に向けられたとは思わず、結局誰にも伝わらないということもよくあります。どのような課題を持っているのか、また求める価値も、課題の解決はもちろんですが、相談しやすさ(親しみ)であったり、まずは実績!だったり、とにかく早く解決したい!だったり、自宅から近い(または人に知られたくないから遠い)などを整理しておくことが大切です。相談先・依頼先候補として残るためにはどんなことを伝えればいいのかを考えやすくなります。
もし、相談者・依頼者の想定が難しければ、これまでの相談者・依頼者の傾向から考えてみることをお勧めします。実際の相談者・依頼者であれば、どんな人(企業)か、どんな課題を持ち、どんな価値を求めているのかがイメージしやすくなるでしょう。それでも傾向がつかめない、絞り込めない場合は、これまでの相談者・依頼者のうち、こういう人(企業)に自所は役立つ、支援ができるという自所が対象にしたい人(企業)を考えてみることで対象を明確にしていく方法も試してみてください。
どのような場所・方法で情報収集をしているのか
最後に、相談者・依頼者はどのような場所・方法で情報収集をしているのかということも整理しておきましょう。対象とした人との接点のない場所でいくら自所のすばらしさを叫んでも、対象となる人(企業)には届きません。接点を持てる可能性の高い場所がどこなのかを整理し、自所のことを伝える場所を選択することが大切です。
法律事務所の競合は誰か?競合の集客方法を理解する
次に競合について整理していきましょう。
競合について整理するポイントは2つ
- 競合は誰か
- 競合は自所の依頼者・相談者にどのようにアプローチしているか
競合は誰か
まずは、競合は誰かについてです。「業務分野や事務所の規模で考えれば、競合が誰かなんてわかりきっている」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、競合とは、自所が考える「競合」ではなく、相談者・依頼者が考える「競合」であるということを意識することが大切です。自所を主体で考えると、先述のように業務分野や事務所の規模など「自社から見た」競合を想定してしまいがちです。しかし、「法律事務所の顧客(相談者・依頼者)を理解する」のセクションで述べたように「親しみやすさ」「実績」「素早い解決」「自宅からの距離」など、相談者・依頼者が求める価値として何を重視しているかによって、競合が異なる可能性があります。
なぜ、顧客が考える競合を意識しなくてはいけないのかは、他の業界の例をみるとわかりやすいでしょう。デジタルカメラが発売された1990年代後半ころは、デジタルカメラの競合は他社のデジタルカメラでした。しかし、2000年ころからカメラ付きの携帯電話が発売され、2010年代にはスマホのカメラが高画質化し、一般に浸透していくと、デジタルカメラの競合は、デジタルカメラの発売当時には考えられなかったスマホになりました。これは消費者が求めていることは「デジタルカメラ」というモノではなく、気軽に思い出をデータとして残せることであるため、それがカメラであってもスマホであっても構わないというのが理由です。顧客が本当に求める価値が何であるかによって競合は変わってくるという例になります。
これは極端な例だと思われる人もいるでしょう。しかし、法律事務所においても、求めるものが「素早い解決」の場合は、もしかすると競合は生成AIになるかもしれません。法律事務所の視点では発想しにくいものが、実は相談者・依頼者の考える競合になる場合があることも意識しておくことが大切です。相談者・依頼者が求めていることから競合が誰になるかを考えていきましょう。
競合は自所の依頼者・相談者にどのようにアプローチしているか
次に、競合がどのように依頼者・相談者にアプローチしているのかを知ることが大切です。競合がどこに広告を出しているのか、広告以外にどんな施策をしているのか、どのような表現でメッセージを伝えているのかなど、どのような価値をどのような方法で伝えているか調べてみましょう。相談者・依頼者が考える競合のため、競合が相談者・依頼者との接点として使用している場所や施策は、自所にとっても効果の高い場所や施策になる可能性があります。ただ、同じように考える競合の多くが、同じ場所、施策に集まれば、自所が目立たなくなる場合もあるため、注意は必要です。しかし、競合の動きは、自所の集客方法の参考になるため押さえておきましょう。
自所の強みと提供価値を整理する

最後に自所の整理の仕方について紹介します。整理のポイントは以下の3つになります。
- 自所は何を目指しているのか
- 自所の提供できる価値は何か
- 競合と違い、優っている点は何か
自所は何を目指しているのか
まず、自所が何を目指しているのか、企業でいうビジョンについて確認しましょう。集客になぜビジョンがでてくるのか、と思われる人も多いかもしれません。しかし、ビジョンをしっかり持つことで自所の提供サービスや集客施策のブレがなくなります。
イメージしやすいように例で考えてみましょう。例えば、「お菓子で健康をサポートする」というビジョンを持つ食品会社があったとします。新商品開発のため消費者アンケートを行ったところ、一部の消費者からパンチの効いた味の濃いスナックが食べたいという要望があることがわかりました。先述のようにお客様の求める価値を提供することが大切なので、味の濃いスナックを企画し、販売したとしましょう。その際、パンチを効かせ味を濃くするために、健康につながるとはいえない添加物を入れてお菓子を作ったとしたらどうでしょう。一時は話題性があって売れるかもしれません。しかし、その食品会社の「お菓子で健康をサポートする」を信じてこれまでお菓子を購入してきたお客様は離れていってしまう可能性があります。社内でも「お菓子で健康をサポートする」ビジョンに誇りを持っている社員であれば、モチベーションが下がってしまうこともあるでしょう。つまり、長期的に見たときにその食品会社にいい影響を与えるとはいえないのです。顧客が求める価値を知り、それに応えようとすることは大事です。しかし、企業のビジョンから離れたことをすると継続的な経営は難しくなる可能性があることを心にとどめておきましょう。
法律事務所においても、相談者・依頼者の求める価値は大事なことであることは変わりません。しかし、自所のビジョンと合わないものまで引き受けていると、短期的な利益を得られても長期に渡り利益が得られなかったり、相談者・依頼者のイメージ、所員のモチベーションに影響を与える可能性があります。提供する価値が、自所のビジョンと合っていることは、事務所の継続にもつながる大事なポイントといえるのです。
自所の提供できる価値は何か
次に自所で提供できる価値について整理してみましょう。これは業務分野の実績だけではありません。親しみやすさ、最後までしっかりとサポートする、誠実さなどソフトな部分も含まれます。自所では気が付いていない価値もあるかもしれません。これまでの相談者・依頼者や他の事務所など、外部からの評価も得ながら、自所が提供できる価値を整理してみましょう。
競合と違い、優っている点は何か
最後に競合との違い、競合より優れている点の整理です。自所が提供できる価値を整理したら、競合が提供している価値とまるで変わらなかった、または、そんなに差がなかったというのでは、自所の特徴・強みとして相談者・依頼者に伝えることは難しいでしょう。究極には相談者・依頼者が求めて、競合は提供できず、自所は提供できるという価値を、3つの整理の中で見つけていくことが理想です。しかし、理想を目指しつつ、競合と比較して相談者・依頼者が自所の特徴、強みと感じてくれる価値を探していくといいでしょう。
整理した内容をもとに法律事務所の集客戦略を考えよう
整理をしてみると、相談者・依頼者に自所を選んでもらうためには、競合との違いで何を訴求していけばいいかが見えてきたのではないでしょうか。整理しても、整理する前とたどり着いた訴求内容は同じだったということもあるかもしれません。それは自所がマーケティング視点をもともと持っていたのかもしれませんし、たまたま同じだったのかもしれません。いずれにせよ、整理して導き出した訴求内容は、依頼者・相談者に届く可能性が高くなります。逆に導き出した訴求内容でうまく伝わらなかった場合も、整理してあれば、次はどうすればいいのかが見えてきます。
マーケティング視点を持つことで、相談者・依頼者の理解につながり、自所にとって効果的な集客施策を考え、実施していきましょう。次回は具体的な集客方法について考えていきます。
LEALA(レアラ)は幅広い法律事務所業務に対応した生産性と依頼者満足度の向上を実現する案件管理システムです。マーケティングにも活用できます。各ポータルサイトや各種広告施策からの流入・受任・売上比率をリアルタイムに可視化し、マーケティングの結果を定量データとして分析、効果的な施策を導き出すことが可能です。他の法律事務所の案件管理の事例だけでなく、マーケティングとしてどのように活用しているのかについてご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事

