公開日 2026/08/06 更新日 2026/08/06
システム導入がうまくいく法律事務所に共通する3つのこと
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。レアラのセールス・シニアマネージャーにインタビューした「法律事務所がシステム導入を成功させるためにおさえておきたいこと」を7回シリーズで紹介しています。第5回である前回は、法律事務所がシステムを導入する前に整理したいポイントについて紹介しました。今回は、システム導入を成功に導くために法律事務所が心がけたいことについて説明します。
- 第1回 「DXだから」でシステムを導入した法律事務所が失敗するただ一つの理由
- 第2回 一般民事系の法律事務所がシステム導入を検討し始める“共通点”とは
- 第3回 企業法務系の法律事務所が「システムに頼りたい」と感じる理由とは
- 第4回 大規模法律事務所がシステムに求めるものはなぜ違うのか
- 第5回 法律事務所がシステム導入前に整理しておきたい5つのこと
- 第6回 システム導入がうまくいく法律事務所に共通する3つのこと ←今回はここ
- 第7回 システム導入がうまくいく法律事務所は、導入前に何をしているのか
システム導入を成功に導くために整理したい5つのポイントを紹介しました。今回は業務的な整理に加え、必要となってくる「心がけ」について紹介します。システム導入を成功させ、業務効率化、事務所の成長を実現させるぞという気持ちがあることは大事だとわかっていても、具体的にどのようなことを心がけておくといいのかについて説明します。
- システム導入時の課題だけに注力してはいけない理由
- 弁護士業務を効率化しただけでは、課題解決にならない理由
- 事務所内の意識統一が重要である理由
システム導入を成功させている法律事務所が意識している3つのこととそれを支える行動
ツール使用状況やなぜそのツールを利用し続けているかなどの整理をしてからシステム導入を決めたはずなのに、サービス提供会社との導入の打ち合わせがスムーズに進まない、またはシステムを導入してはみたものの業務効率化どころかかえって業務が増えた気がするなど、システム導入がうまくいかないことがあります。お客様と導入に向けて打ち合わせをしていく中で、セールス・シニアマネージャーが感じた、システム導入に成功する、成功していると感じる法律事務所に共通する、システム導入を検討し始めたらしてほしい、以下の3つの「心がけ」について説明します。心がけの説明の後、心がけを支える具体的な行動についても紹介します。
・現時点の課題だけで考えない
・弁護士業務、事務局の業務、両方を見る
・事務所内の意識を統一する
それぞれについて、説明します。
現時点の課題だけで考えない
最初から法律事務所全体の業務効率化や成長を目指してシステムの導入を検討する法律事務所ばかりではないでしょう。多くは、所員が自分の業務で手間がかかって困っていることについて、効率よく、正確にできる方法はないかという課題感から始まっているのではないでしょうか。他の所員も同じ課題感を持っていることがわかり、解決のためのツールを探し始めたという経験をもつ法律事務所も多いかもしれません。そんな中、システムに求める機能があることを知った際、導入候補の中にツールに加えシステムも入ってくることもあるでしょう。
例えば企業法務系の法律事務所で、タイムチャージの登録の手間に課題を感じていたとします。タイムチャージの登録さえ簡便になればという考えでツールやシステムを探したとします。そして、タイムチャージさえできればいい、だからいろんなことができるシステムであることはわかるけど、その機能だけ使えればいいと思う可能性があります。
その事務所では、もしかしたらタイムチャージを簡便に登録したいという以外は、課題と感じる、または課題として認識しているものがないのかもしれません。導入のきっかけの際にも説明したように、独立した業務はほとんどありません。タイムチャージも顧問契約や案件管理に直結しているものです。現時点で課題がタイムチャージの登録だけであっても、タイムチャージの登録をこれまでとは異なるツールやシステムを利用するようになることで、これまでは課題にならなかった顧問契約や案件管理とのデータ連携が新たな課題になる可能性があります。
だからこそ、現時点の課題は本当にこれだけなのか、他の課題はないのか、この課題を解決したら新たな課題が出てきたりしないのかをツールやシステムを選択する際に考えることが大切です。この作業を効率化したいからこの機能があればいいのではなく、この作業は他の業務とのつながりの中で完結することを理解したうえで、課題が本当にそれだけなのかを確認するよう心がけましょう。課題が出てくるたびにツールを追加していくという、つぎはぎのパーツを集め続けていると、業務効率化を実現させることは難しいばかりか業務負荷が増えてしまう可能性があることを心にとめておきましょう。
弁護士業務、事務局の業務、両方を見る
弁護士は当然のことながら弁護士の業務をしているため、先述のタイムチャージの登録のように弁護士業務における課題に気が付くことができるでしょう。しかし、法律事務所の業務は弁護士の業務だけで成り立っているわけではありません。請求書の発行や経費の処理など事務局の業務があって成り立っています。
弁護士業務の課題が解決され、効率よく仕事が進められたとしても事務局が業務過多でパンクしてしまったら法律事務所として成り立たなくなる可能性もあるでしょう。
弁護士は弁護士の業務で忙しい、業務に集中したいとしても、事務所のためには、事務局の業務について、その課題について関心を持つことをお勧めします。
事務局が忙しいのは、業務自体よりも先生たちがそれぞれのフォーマットで情報を登録しているために、それぞれの情報を請求書発行用に整理することに時間を取られているなど、弁護士業務に集中していると気が付かなかったことが見えてくるかもしれません。弁護士業務における業務フローを分析して課題を整理し、自分たちの業務効率化を目指すことは大事なことです。一方で、自分たちが頑張った業務も、それを事務局が請求しているから事務所が成り立っていることを考え、事務局の業務に関心をもつ、事務局がどういう理由で業務過多になっているかを知り、解決できる方法を考えることが必要です。
法律事務所は弁護士の業務と事務局の業務の両方で成り立っています。そのため、課題を解決するためにシステム導入を検討したいと考えたら、弁護士、事務局の両方の業務をみて、両方の課題を整理するように心がける、それが大切なのです。
事務所内の意識を統一する
システムを導入する前は、多くのツールを使用していたとしても、弁護士ごとに登録の仕方に個人差があったり、使っているツールが異なっていたりなど、すべて統一されていなくても業務を進められていたかもしれません。しかし、システムを導入すると、システムのフォーマットを使用し、システム内で情報の連携を行うというような登録や連携も含めた業務フローの統一化を事務所内で行う必要があります。
例えば、A弁護士、B弁護士、C弁護士はそれぞれに自分のやり方でこれまでやってきたので、システム導入による業務フローの統一といっても、もしかしたらピンとこないかもしれません。一方で3人の弁護士のやり方がすべて異なっていることを知っている事務局から見れば、統一は嬉しい限りだとしても、A先生は納得してくれるかもしれないけど、B先生は嫌がるのではないかということを心配します。それに気が付かずにシステム導入を進めたら、弁護士業務の効率化を目的にしていても結局システムを使用しない人が出てきてしまう可能性があります。
また、事務所で受けている案件と、個人で受けている案件をもっている弁護士が所属している事務所でも、システムを導入するには、業務フローを統一しなければなりません。統一しないとシステムを導入して得られる事務局の工数を減らすことが実現できなくなります。もちろん、セキュリティは分けなくてはいけないでしょう。しかし、システム導入の意味を持たせるためには、フローは統一する必要があるのです。
このように独自の方法をしている弁護士や、個人で受けている案件がある弁護士など、業務フローの統一に抵抗がある所員がいても不思議ではありません。業務フローの統一が必要な以上、抵抗が残っている状態でシステム導入を進めてもうまくいかない可能性が高いといえます。だからこそ、システム導入前に事務所内のコンセンサスをしっかりとっておくことを心がけましょう。
3つの心がけを支える具体的な活動は「なぜその課題が発生しているのか」という要因の追求

心がけることはできても、どうやって現時点だけにとどまらない課題について考えられるのか、事務局の業務を理解できるのか、業務フローの統一に抵抗がある人たちを説得できるのかと悩んでしまうかもしれません。その悩みの解決につながるのが、課題の要因追求です。具体的には以下のことをやってみるのがいいでしょう。
- 課題の要因はそもそも何なのかを深堀る
- 事務局のパンク状態は数値で具体的に
- 抵抗要因を探るには各弁護士の業務フローの理解から
それぞれ見ていきましょう。
課題の要因はそもそも何なのかを深堀る
課題を深堀ることで、課題の根本的な要因が見えてきます。例えばタイムチャージが登録しにくく、請求書の発行にも苦労していたとしましょう。その要因を調べていくと、例えば、顧客管理の仕方、案件管理の仕方など弁護士によって異なり、A先生は詳細にタイムチャージを取っているが、B先生は雑で数字がばらついているので正確な数字が取れなくなっていることで、経理が困っているとわかったとします。では、なぜA先生とB先生の違いが起きているのでしょうか。次にその違いが起きる理由を考えてみることが大切なことです。なぜなら発生している課題はあくまでも結果だからです。その際、性格など人的な問題に焦点を当てるのではなく、なぜその仕組み(それぞれが異なる管理方法)になってしまったのかを考えることが必要です。なぜを何度も繰り返すことで、現在の仕組みになった要因を見つけましょう。なぜなら、課題を仕組みで解決するのがシステムだからです。
課題の要因を深堀りし、なぜそのような仕組みになってしまったのかが明らかになれば、現時点で見えていた課題はほんの一部であることに気が付き、他の課題も含めた解決方法について考えることができるでしょう。
事務局のパンク状態は数値で具体的に
事務局がパンク状態であることは、状況を見た人には理解できるかもしれません。システムは何度もお伝えしてきたように手間と費用が掛かるものです。パンク状態という言葉だけでは、事務局の業務効率化の目的でシステムの導入検討に進むのは難しい場合もあるでしょう。
「パンク状態」ではなく、何が課題なのかを言語化できるようにすることが大切です。効率化が進んでいない、生産性が低い、残業が多い、という表現も言語化していることになるかもしれません。しかし、説得力を持たせるためにもう一歩踏み込んで、パンク状態であることを数値で示していきましょう。今月は残業が多く、残業代、人件費がどれだけかかっているのか、現在の費用をどのレベルまで下げたいのかというふうに、現状+目標を数値化することで、誰もが状況を具体的に理解できるようになります。
そして、目標のレベルにするには、何をすればいいのか、ボトルネックは何なのかについても、定量的に弁護士が把握できれば、弁護士業務だけではなく、事務局の業務の効率化も考えたシステム導入の検討をしていくことができるでしょう。
抵抗要因を探るには各弁護士の業務フローの理解から
先述したように課題の要因を探るには、人的な問題に焦点を当てるのではなく、なぜその仕組みになったのかを考えることが重要です。システム導入に抵抗感を示している弁護士がいたら、事務所で統一した業務フローにしなければシステムを導入した効果は得られないからと説得するだけでは、抵抗感を軽減することは難しいかもしれません。
まずは、事務所内でのその弁護士の業務フローを理解する必要があります。業務フローを理解することで、その弁護士が課題と感じていること、困っていることを理解していきます。課題が理解でき、システム導入によりその課題が解決できることを伝えることが出来たら、抵抗感がなくなる可能性が高いでしょう。抵抗感があった理由が、システム導入を進めている人たちが解決できるといっている課題について自分は課題に感じておらず、自分が課題と感じていることの解決にはつながらないと思われるシステムに魅力を感じていなかったということもあり得るからです。業務フローを理解し、相手が抱えている課題を明らかにすることで、システム導入に対する積極的な同意につなげていきましょう。
3つの心がけとそれを支える課題の要因の追求がシステム導入を成功に導く
システム導入前に整理したいポイントに続き、心がけについてお伝えしました。業務フローの統一をしなければシステム導入を成功に導けない限り、業務フロー統一化に向けた対応が必要となります。課題とその要因の探索、弁護士だけでなく事務局の業務効率化の重要性の認識、事務所内のコンセンサスは重要であるといえるでしょう。心がけを忘れず、課題の要因追求をしていきましょう。それがシステム導入を成功に導いてくれます。
次回はいよいよ最後の回です。システム導入を成功させる法律事務所が事務所内で何をしているのかについて紹介します。
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鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事
金 大翔
株式会社レアラ セールス シニアマネージャー
複数社で営業・事業開発に従事後、コンサルティング業務を経てレアラに参画

