公開日 2026/09/07 更新日 2026/09/07
「契約書の向こうに何を見るか」企業法務系弁護士が信頼を獲得するのに必要なこと
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。レアラのセールス・シニアマネージャーへのインタビュー第2弾、「法律事務所が商談する時に役立ててほしいこと」を3回シリーズで紹介していきます。前回は一般民事系弁護士が商談で大切にすることについて紹介しました。2回目の今回は、企業法務系弁護士が信頼を獲得するのに必要なことについて紹介します。
- 第1回 「”案件”ではなく”人”を見る」一般民事系弁護士の商談で最も大切なこと
- 第2回 「契約書の向こうに何を見るか」企業法務系弁護士が信頼を獲得するのに必要なこと ←今回はここ
- 第3回 「相談者にとっての最適解を提供する」選ばれる弁護士に求められる姿勢とは
企業法務系の相談者は企業になります。ここでは、企業との商談を成功させる、顧問契約を継続させるために心がけたいことについて説明します。
- 法的アドバイスができればいいがNGな理由
- 信頼を獲得するために必要なこと
- 対等なパートナーという意識の必要性
法律の専門家だから法的アドバイスができればいいがNGな理由
企業法務系の弁護士の仕事は、対企業になるため、相談窓口になる人も企業人として常識がある、しっかりした人である可能性が高いといえるでしょう。契約もきちんと考えられたものであり、契約の内容にミスがないかを確認すればいいという、弁護士としては、企業法務の案件は、ある意味安心感をもってできる仕事かもしれません。
そのような状況では、自分は法律の専門家だから、法的な観点から契約書を確認するのが仕事であり、顧客企業がどんな会社なのかは関係ないと思ってしまう人がいても不思議ではないでしょう。しかし、企業法務系の弁護士も、前回『「”案件”ではなく”人”を見る」が一般民事系弁護士の商談で最も大切なこと』で紹介したことと同様に、「契約書」ではなく「顧客企業」を見ることが大切であるといえます。なぜなのでしょうか。
顧客企業の立場に立って考えてみましょう。業界によって企業に求められること、または各企業が抱える課題は、当然のことながら異なります。契約書における法的アドバイスがほしいから弁護士に依頼しているとしても、業界、企業の事情、または、なぜ、どのような状況でこの契約書を締結するのかなど、その企業について全く関心を示さない弁護士だったら、安心感、信頼感をいただくのは難しいといえるのではないでしょうか。なぜなら、法的観点では問題のない契約だったとしても、契約書の内容自体は、顧客企業が置かれている環境に関係したものだからです。
顧客企業の置かれている環境を考慮したら、もしかしたら契約書に追加したほうがいい、または検討しなおしたほうがいい内容があるかもしれません。依頼した契約書の確認という意味では、顧客企業が置かれている環境のことまで考慮しなくても、弁護士としてはしっかりと仕事をしているといえるでしょう。一方で、自社に関心を示してくれ、自社の状況を考えたら、この項目は再検討したほうがいいなどの提案をしてくれる弁護士だと、自社に関心をもち、自社を大切に思ってくれていると感じるのではないでしょうか。そして、自社を任せたい、信頼できる弁護士に依頼してよかったと思うでしょう。逆に、仕事はしっかりとしてくれているとは思っていても、自社に関心がないことが垣間見える弁護士だったら、自社を大切に思ってくれているのだろうか、自社を任せていいのだろうかという不安が生じ、顧問契約を結ぶこと、顧問契約を継続することに躊躇するかもしれません。
つまり、契約書への法的アドバイスがどれだけ的確で、知見がある弁護士だとしても、顧客企業に関心をもち、信頼を獲得することが商談成立、また顧問契約の継続に向けて、必要なことであるといえるのです。
信頼を獲得するために

では、企業から信頼を獲得し、顧問契約をしたい、顧問契約を継続したいと思ってもらうには、どのようなことに関心を持ち、何をすればいいのでしょうか。ここでは、信頼を獲得するために、ぜひ関心を持ち、理解してほしい3つのことを紹介します。
- 事業を理解する
- 経営課題を見る
- 業務フローを見る
それぞれについて、見ていきましょう。
事業を理解する
まずは、最も基本である、相談(顧客)企業の事業について関心を寄せ、理解することから始めるのがいいでしょう。例えば、メーカーだったら何を製造しているのか、どんなところと取引しているのか、事業を進めていく中で何に困っているのかなどです。
それには業界の理解も必要であるといえます。業界特有のルールなどはないか、競合にはどのようなところがあり、顧客企業は業界の中でどのような位置づけなのかなど、広い視野からも顧客企業を理解しましょう。なぜなら、業界自体の動向、業界の中の位置づけなど、その企業を取り巻く環境は、企業の今後の展開に影響を与え、場合によっては契約内容に反映させる必要性もでてくるかもしれません。
事業を理解することで、法的観点よりも広い視点で契約書の確認をすることができるでしょう。そのような理解からの指摘やアドバイスは、顧客企業も自社のことを考えてくれていると感じ、信頼につながるでしょう。
経営課題を見る
事業の理解が出来たら、次に経営状況も気にするようにしましょう。事業に関心を持つことで、顧客企業が業界でどのような位置づけであるか理解できたとしても、実際の経営状況までをきちんと見ないと、その位置づけのままでいられるのか、その位置を維持、または向上させていくためには、経営上どんな課題があるのかなどが見えません。見えない中で、企業が締結する契約書を確認していくと思わぬところに落とし穴があり、現時点では見えない法的リスクなどに考えが及ばない可能性があります。
経営状況、経営課題まで関心を持ち、理解したうえで、現在と将来の企業を見据えながら契約書の確認、顧問としてのアドバイスが出来たら、企業から信頼されるでしょう。
業務フローを見る
顧問契約をしていれば、例えば労務問題など契約書の確認以外にも、企業から相談を受けることもあるでしょう。ここでも、相談を受けた内容について法的観点からアドバイスするだけでは、信頼構築にはつながらないといえます。相談された内容、つまり企業が抱えている課題はどこから発生しているのかを見ていく必要があります。
そのためには業務フローに関心をもち、理解することが大切です。抱えている課題は業務フローのどこから発生しているのか、調べて知っていくうちに、もしかしたら企業が気が付いていない法的リスクが隠れているかもしれません。場合によっては、企業が課題と感じている内容より対応を先にしなくてはいけないことだったりするでしょう。または課題の発生源を探していたら、実は課題は別のところにあったということがわかるかもしれません。
相談されたことに、ただ法的観点から回答、アドバイスするだけでなく、法的知見があるからこそ気が付くリスクや課題を、業務フローを理解することで浮かび上がらせ、解決に向かうことが出来たら、企業の弁護士への信頼は高まるといえるでしょう。
対等なパートナーであることを忘れずに
これまでは、企業に信頼され、顧問契約を獲得、継続するために、どのようなことに関心を持ち、理解をすればいいのかについて説明してきました。ここでは、顧問契約をするときに弁護士が意識することについて紹介します。
意識することはただひとつ、「弁護士と顧問先企業は対等なパートナーである」ということです。
これには2つの意味があります。
- お客様である企業の立場が優位であってはいけない
- 弁護士の立場が優位であってはいけない
それぞれ見ていきましょう。
お客様である企業の立場が強くあってはいけない
営業に慣れていない弁護士も多いのではないでしょうか。一方、企業は対企業向けの営業や商談に慣れていることが多く、窓口になる人は特に営業のスキル・経験が豊富な人である可能性があります。
「営業に慣れていない=同じような案件ではどのような金額、条件になるのかの経験が少ない」または「営業に慣れていない=お客様から出された条件はできる限り対応しなくてはならないと思っている」といえます。例えば、多くの企業と顧問契約をしてきた経験があれば、企業から出された条件が自分に不利なことが含まれていないかなど、注意したい点にすぐ気が付くことができ、また気になる条件について交渉ができるでしょう。
もしかしたら、企業は条件提示後に当然交渉があるものと思い、最初は少し強気な(自社のメリットが大きい)条件を出してきているかもしれません。しかし、注意すべき点に気が付かず、また気になったとしてもお客様が出された条件だから、そのまま受け入れなければいけないと思い、お客様からの条件通りに顧問契約を結んでしまうというのが、「営業に慣れていない」弁護士には起こりうるのです。
このような場合は、お客様である企業が意図したか否かにかかわらず、企業の立場が優位になっているといえるでしょう。営業に慣れてないからこそ、顧問契約の内容はしっかり確認していきましょう。また、「お客様は神様」ではありません。気になる条件があったら、躊躇せず交渉できるようにしましょう。
弁護士の立場が優位であってはいけない
企業の立場が優位であってはいけないように、弁護士の立場が優位であってもいけません。弁護士は法律知識をもつ専門家です。専門家だから、企業は自分に依頼する立場であり、弁護士のほうが立場が上であるという思い込みや、プライドが高すぎると、弁護士(自分)の立場を優位にしてしまう可能性があります。
このような弁護士は、企業から提示された条件が納得できないと交渉もせずに、契約をしないと決断してしまうかもしれません。そのようなことが続けば、顧問契約を獲得、継続する企業がなくなってしまうでしょう。
交渉して契約、契約の継続ができるのであれば、自分の立場が優位であることは、弁護士に取って悪いことではないと思う人もいるかもしれまん。しかし、一方が優位であると、優位ではない立場の人は発言権が弱くなるなど、コミュニケーションに課題が生じる可能性があります。企業が聞きたいことも聞けない、伝えたいことも伝えられない関係になってしまったら、例えば、契約書のある項目について弁護士から、この記載は不要といわれたら、実は企業側がある意図をもって記載した内容だったとしても、そのことを言い出せないような関係性になっていたら、最終的に企業の意図が反映されないまま契約書が作成されてしまう可能性があるのです。これでは、弁護士としてもきちんと仕事をしたことにはならないでしょう。つまり、弁護士の立場が優位であることも、企業との関係性として決していいことではないといえるのです。
弁護士は企業と顧問契約を結ぶ、また継続する時、そして顧問として企業と一緒に仕事をしていくとき、どちらかが優位になっていないかを気にするようにしましょう。弁護士と企業は「対等なパートナー」であることを忘れない、それが顧客企業との関係性を良好にし、そして、仕事もしやすくしていく秘訣なのです。
契約書の向こうにあるものをしっかりと見なければ信頼関係は築けない
法的観点から契約書を確認することが、顧問弁護士としての仕事であることには変わりはありません。ですが、契約書を見ているだけなのか、契約書の向こうにある顧客企業そのものにも目を向けているのかによって、企業から向けられる信頼度は大きく異なってきます。そして信頼関係の構築は、継続した顧問契約につながります。
契約書の向こうにあるものをしっかりと見て、顧客企業との信頼関係を築いていきましょう。
次回は3回シリーズの最後になります。一般民事系、企業法務系弁護士、どちらにも必要な「選ばれる弁護士に求められる姿勢」について紹介します。
LEALA(レアラ)はタイムチャージの登録漏れによる売上損失を回避するだけではなく、請求時間の修正作業を効率化し事務所全体の生産性向上に貢献する案件管理システムです。特にタイムチャージについてはカレンダーからの自動登録、ストップウォッチによる稼働時間を測定など、複数の登録方法を用意しているため、好みの登録方法を見つけることが可能です。もちろん、登録時間に矛盾があればシステムで検知可能です。
顧客企業に関心を示し、調べて理解する時間を確保するためにも、手間のかかるタイムチャージの登録は簡便にしていきましょう。
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鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事
金 大翔
株式会社レアラ セールス シニアマネージャー
複数社で営業・事業開発に従事後、コンサルティング業務を経てレアラに参画