公開日 2026/07/16 更新日 2026/07/16
法律事務所の顧客維持を高める3つのコミュニケーション
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。本シリーズでは、7回にわたって法律事務所の経営に役立つマーケティングの考え方を紹介しています。前回は商談に必要なマーケ視点について説明しました。第7回の今回は、顧客維持のために心がけたい3つのコミュニケーションについてみていきます。
ここでは、受任後の関係づくりをはじめ顧客維持のために心がけたい3つのコミュニケーション、「依頼者含めた関係者とのコミュニケーション」「自所内コミュニケーション」「社外とのコミュニケーション」の3つのコミュニケーションについて紹介します。
- 依頼者との継続的なコミュニケーションにおけるポイント
- 自所内コミュニケーションにおけるポイント
- 社外コミュニケーションにおけるポイント
顧客維持のために心がけたい3つコミュニケーションとは
顧客維持のために心がけたいコミュニケーションは、受任後の依頼者とのコミュニケーションだけを指しているわけではありません。依頼者との関係構築は受任後も引き続き必要になってくるものでしょう。しかし、依頼者との関係構築から「顧客維持」へと視野を広げると依頼者との関係だけにとどまらないコミュニケーションの必要性が見えてきます。顧客維持、つまり継続的に顧客がいる状態にするためには、以下の3つのコミュニケーションを考えていくといいでしょう。
- 依頼者との信頼関係を築くコミュニケーション
- 顧客満足を左右する事務所内のコミュニケーション
- 紹介・関係者との関係構築につなげるコミュニケーション
一つ一つについて必要性や施策について説明していきます。
依頼者との信頼関係を築くコミュニケーション
まずは、依頼者、案件に関係している人たちのコミュニケーションです。契約中のコミュニケーションから課題解決後のコミュニケーションまで、依頼者・関係者とのコミュニケーションを通じた関係構築は重要であることは、誰もがうなづくことではないでしょうか。コミュニケーションの方法としては以下の3つがあります。
- メール、面談等によるコミュニケーション
- メルマガを活用したコミュニケーション
- セミナーによるコミュニケーション
一つずつ見ていきましょう。
メール、面談等によるコミュニケーション
メールや面談といった依頼者・関係者とのコミュニケーションは、受任前も受任後も必要なものです。受任=自所への信頼を持ってくれたということではありますが、信頼し続けてもらえるよう、受任後も関係構築を意識したコミュニケーションをしていくことが求められるでしょう。
ここでもマーケティング視点である「依頼者・関係者の立場に立つ」を意識するとポイントが見えてきます。例えば、以下のようなことが、受任後に依頼者・関係者が求めていることといえるのではないでしょうか。これは法人でも個人でも求める程度の差はあっても同様といえるでしょう。
- 進捗を把握しておきたい(安心したい)
- 自分(自分たち)の理解と相違はないか(認識齟齬がないか)
- 何かあればすぐに対応してくれるか(質問のしやすさと対応スピード)
一つ一つ見ていきましょう。
進捗を把握しておきたい
「定期的な連絡がない」「スケジュールが提示されない」「次に何をするのかが不明瞭」など、進捗が見えないと不安になるのは、法人も個人も同様でしょう。自所ではきちんと対応していると思っていても、先方はそうは思わないケースもあります。専門知識などの違いにより「これをするにはこれくらいかかる」の理解が異なることに注意しましょう。
例えば、自所では何度も経験しているため、ある依頼の調査をするには2週間はかかるのが一般的だと思っていたとしましょう。しかし、依頼者は説明がない限り、調査に2週間かかること、また2週間でどのような調査ができるのかを知りません。それを「では、調査しておきます」とだけ、伝えられ、2週間何も連絡がなかったら不安に思うのは当然でしょう。どのような調査を行い、どれくらいの時間がかかるのかを伝えるとともに、すべての調査が終わるまで待たずに途中経過を伝えていくと、依頼者・関係者は安心するのではないでしょうか。
自所での当たり前は依頼者の当たり前ではないことを意識して、相手が不安にならないようなコミュニケーションをとるようにしましょう。
自分(自分たち)の理解と相違はないか
解決方法など課題解決に向けた進め方、また最終的にどのように解決するのかについても、依頼者・関係者の立場に立って伝えることを忘れないようにしましょう。自所では十分に説明したと思っていても、先方が同じレベルで理解しているとは限りません。個人も法人も自分たちのいる環境や経験からでは馴染みのない内容を理解することは簡単なことではないためです。
自所が考える解決方法や得られる結果と、依頼者・関係者が理解しているものが同じかどうかを定期的に確認するといいでしょう。進捗や状況によって、当初想定していた結果、スケジュール、費用などが異なる可能性も出てくるかもしれません。だからこそ、定期的に、また変化があったときには説明をしていく必要があるといえるのです。説明の際には、専門用語に気を付けて、依頼者がどのように理解しているかを確認することも忘れないようにしましょう。「聞いていた話と違う」とならないようにするには、丁寧なコミュニケーションが大事なのです。
何かあればすぐに対応してくれるか
質問のしやすさとレスポンスのスピードも関係構築には重要な要素です。どれだけの専門知識や実績があっても、質問しにくい、質問してもなかなか返信が来ない場合は、不安が募ります。それが続けば、自分(自分たち)のことを大切に思っていないのではないかと不信感につながるかもしれません。返答が簡単にできる内容ではない時は、質問を受け取ったこと、返答にどれくらいかかるのかだけでも伝えることで、依頼者・関係者の心情に寄り添うように心がけることが大切です。
メルマガを活用したコミュニケーション
第5回「法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選」で説明したようにメルマガは「依頼者を育成する」施策として有効です。そして、それ以外に顧客との関係維持にも大切なコミュニケーションツールとして活用できます。
取引が継続的な傾向がある法人については、メルマガによって、普段のやり取りでは話題にあがらない自所の最近の動向を伝えることが可能になります。これにより、自所の理解を深めてもらうこともできるかもしれません。
一方、特に取引の継続性は限定的な傾向にある個人は、課題が解決すれば法律事務所との取引は終了となることが多いでしょう。課題解決に長期の時間が費やされた場合など、法律事務所と関係構築ができる場合もあるかもしれません。しかし、法律事務所は法的課題を解決するところであるため、ほとんどの依頼者にとって、課題解決後に近くまで来たからといって気軽に立ち寄れるところとはいえないでしょう。メルマガは課題解決後の依頼者との関係維持に活用できる施策といえます。例えば、何らかの法的課題によって相談・依頼したことで、法的な知識が少し身についた、興味を持った人も依頼者の中にはいるかもしれません。そんな人たちに豆知識だったり、最近のニュースになっている事件を例に注意点などを伝えていくメルマガがあると、読んでくれる人もいるでしょう。BtoBのメルマガの際にも紹介したように、すべてをメルマガで完結させなくても、一部のコンテンツの続きはホームページへのリンクを貼ってページで読んでもらうようにすれば、メルマガも長文にならず済み、またホームページへの誘導によって他のコンテンツを読んでもらえる可能性もあるでしょう。
必ずしも毎回読んでもらえなくても、継続的にメルマガが届くというつながりは関係維持には大切です。BtoB、BoCともにメルマガは顧客との関係維持に最適な施策といえるのです。
セミナーによるコミュニケーション
セミナーは新規顧客獲得、依頼者への育成、受任中および取引終了後の顧客との関係維持と、「顧客維持」のすべてに活用できる施策といえます。新規顧客獲得については、第3回「法律事務所の新規顧客獲得!まず考えたい3つの集客施策」、依頼者への育成については、第5回「法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選」において説明してきました。
ここでは、受任中および取引終了後の顧客との関係維持について説明します。セミナーは、現在、自所と連絡を取り合っている受任中の依頼者には自所への理解を深めるため、また対象が個人の場合に多い、取引終了後で現時点で課題を持たない元依頼者には、何かあったときのために自所を思い出してもらうための接点として役立ちます。
注意点としては、現在自所と取引している人(企業)にとっては課題解決に向けて進んでいる途中、取引を終了している人(企業)にとっては、課題が解決した状態であることを理解しておくことです。つまり、よほど興味深い内容ではない限り、セミナー参加のために多くの時間を割くとは考えにくいといえるのです。そのため、移動時間も使うリアルセミナーよりは、参加無料で、20~30分程度の短めのウェビナーほうが参加しやすいといえるのではないでしょうか。ニュースに関連した法的な知識提供と注意すべきことを中心に、法人には知識の提供をすることで、個人には法律に触れたことをきっかけに芽生えた興味・関心を満足させていくことで、自所との関係維持につなげましょう。ウェビナーは弁護士の顔もが見えることで、関係維持にはメルマガ以上の効果を発揮するかもしれません。
このような施策をしていくことで、継続した取引や他の案件の受注など「顧客維持」につなげていくことができるのです。
顧客満足を左右する事務所内のコミュニケーション

一人事務所で事務の人も雇っていないという場合を除き、法律事務所内でのコミュニケーションは「顧客維持」において重要だといえます。もちろん、抱えている案件が異なれば、コミュニケーションは不要と考える人もいるでしょう。しかし、情報共有のためだけではなく、以下を達成するコミュニケーションによって、自所の顧客維持につなげることが可能になるのです。
- サービスレベルの一貫性
- 事務所としての信頼獲得
それぞれについて説明します。
サービスレベルの一貫性
相談したい法的課題が発生したとき、相談者が検索や生成AIへの質問をして表示されるのは、法律事務所であり、一弁護士ということはほとんどないでしょう。相談者・依頼者は法律事務所のホームページを確認し、そして選択した法律事務所に問い合わせることになります。
問い合わせ窓口の対応(電話での応答や、メールでのレスポンス時間や返答内容など)は事務所に対する印象に大きく影響するといえます。一度の問い合わせで、安心して相談できそうと思われることもあれば、問い合わせるのではなかったと残念に思われることもあります。もちろん、問い合わせ者の感情であるため自所でコントロールできるものではありません。しかし、少なくとも問い合わせしたことを残念に思われない、または一人でも多くの人が相談したいと思うような対応を考えることは可能だといえるのではないでしょうか。
それには自所内でのコミュニケーションが不可欠です。問い合わせメールや電話の内容と実際の返答について、なぜ相談に進んだのか、進まなかったのかを自所内のコミュニケーションにより整理して、次回の問い合わせ対応に反映していくことができるからです。何度か繰り返していくうちに、窓口対応のサービスがレベルアップし、またサービスの一貫性も確保できるようになるでしょう。
また、相談中(依頼するまでの期間)や受任後についても同様です。担当弁護士とのやり取りが中心になりますが、事務の人や他の弁護士との接点が一切なくなるということは少ないでしょう。その際、人によって説明内容や対応がバラバラでは、依頼したことを後悔されてしまうかもしれません。誰に聞いても同レベルの回答が返ってくる、または回答できる人へつなぐ対応をしてくれれば、依頼者も安心できるのではないでしょうか。自所内のコミュニケーションなしで、このような対応をするのは難しいといえるでしょう。
自所としてのサービスレベルを一貫させ、さらにレベルアップしていくためにも、情報共有以上のコミュニケーションが求められているといえるのです。
事務所としての信頼獲得
レベルの高い一貫性のあるサービスは、自所の信頼獲得につながります。誰に質問しても説明が整理されている、無駄がない対応ができる法律事務所は依頼者も安心して任せられると感じるでしょう。一方で機能的なサービスレベルに加え、情緒的な面も信頼感を高めるには必要といえます。
サービスはしっかりしていても、事務所を訪問した時に感じる、ピリピリしている、誰も口を利かず仲が悪そうなど居心地の悪さは依頼者の心情にいい影響を与えるとはいえないでしょう。仲良しこよしである必要はありませんが、依頼者が安心できる雰囲気作りは大切であり、それが自所への信頼に影響があることを気にしておくといいでしょう。このような雰囲気を作るにも普段からのコミュニケーションは大切です。依頼者の訪問があった時だけ表面的に繕っても、雰囲気の悪さは感じ取られてしまうかもしれません。
また、コミュニケーションにより自所内でお互いを気にするようになると、ちょっとしたフォローができるようになります。例えば、相談後、部屋から出てきた依頼者が、ちょっとした表情を見せたとしましょう。自所で働く他の人が気が付いて「少し不満そうに思えたけど何かあった」「不安そうに見えたけど大丈夫」と担当弁護士に伝えたらどうでしょう。実は相談中は納得して聞いているようだったために、担当弁護士は気が付いていないことだったかもしれません。部屋を出た瞬間の表情は、担当弁護士から見えないからこそ依頼者に現れたものかもしれません。それを教えてもらうことで、担当弁護士は、依頼者に再度説明したり、次回からもっと理解しているのか、不安に思っていないかの確認をしてみようと思うのではないでしょうか。依頼者の気持ちに寄り添うには、自分以外の視点を持った人からの気づきは大切です。このようなお互いのフォローは、依頼者から法律事務所への信頼度を高めることにつながるでしょう。
このように、1つ1つの案件は担当が決まっていて情報共有できないことが多いからコミュニケーションは不要というのではなく、法律事務所として、一貫性のあるサービスの提供や信頼度向上のためには普段からのコミュニケーションは重要であるといえるのです。それが現在の依頼者の満足度向上、そして将来の依頼者の期待度向上につながり、「顧客維持」になるのです。
紹介・関係者との関係構築につなげるコミュニケーション
他業界・外部ネットワークとの関係構築は顧客維持のために非常に重要であるといえます。第3回「法律事務所の新規顧客を獲得するための集客施策3選」でも説明しましたが、自所の専門性、得意分野などを理解し、関係構築もできている人からの紹介は受任に結び付く可能性が高いといえるでしょう。ここでは、紹介につながる関係を外部の人と築いていく際に、コミュニケーションとして心がけたい、以下の2点について説明します。
- 営業ではなく関係構築がカギ
- 双方向の価値提供が大切
それぞれについてみていきましょう。
営業ではなく関係構築がカギ
士業同士の集まりや異業種交流会は人脈を広げるために参加している人が多いものです。もちろん、営業目的で参加している人も少なからずいるでしょう。だからといって、交流会で「何か法的課題を抱えたら、相談してください」と営業の話ばかりしていては、人は離れてしまうかもしれません。
もし、自分や知り合いが法的な課題を抱えた場合、営業の話ばかりしていた人よりも、信頼関係が構築された人に相談しようと思うのではないでしょうか。法的な課題はいつ起きるかわからないものです。だからこそ、何かあっても相談できる人がいるから安心だと相手に思ってもらえるような関係になれば、いずれ相談または紹介してくれることがあるでしょう。まずは、お互いの仕事や人柄を理解することから始め、営業よりも関係構築を意識しましょう。
双方向の価値提供が大切
関係構築を心がけているからといって、法的な課題を抱えたら、自所に相談してほしいと一方的に思っているだけでは、営業の話ばかりしている人とそれほど差があるとはいえません。一方的な思いではなく、相手の助けになることも考える、お互いが価値を提供しあう関係になることが大切です。相手のサービスを求める人がいたら紹介する、相手が必要と思うような情報を提供するなど、自分も相手の力になれることを考えることで、関係はさらに強まることでしょう。
営業より関係構築、自所への紹介の期待をするだけでなく相手の利益も考える双方向の価値提供、これは外部との関係構築に不可欠なポイントといえます。
関係を構築し、何かあれば相談できるから安心と思われることで、将来の顧客紹介「顧客維持」につなげましょう。
顧客維持には関係構築だけでなく外部からの情報収集も大切
顧客維持に必要な外部とのコミュニケーションは、関係構築という深いものだけではありません。情報収集という役割もあります。出会ったすべての人との関係構築は難しいですが、情報は一度話しただけでも得られる場合があるでしょう。普段からネットなどで情報収集することは大切です。しかし、士業同士、異業種交流を通じて得た情報は、その業界にいるからこそわかる、または体験したことをもとにしたものであるため、ネットで得た情報より詳しく、そして興味深いものではないでしょうか。そして、そのような情報収集から、今後力を入れていくべき分野や集客方法を考えるきっかけを得られることもあり、最終的に「顧客維持」につながっていくといえるのです。
3つのコミュニケーションを心がけ、継続的な関係構築で次の受任につなげよう
現在の依頼者から将来の依頼者までを含めた「顧客維持」のため、依頼者・関係者、自所内、外部とのコミュニケーションは非常に重要です。それぞれのポイントを意識することで「顧客維持」に効果的なコミュニケーションをとっていきましょう。
7回にわたって紹介してきた法律事務所の経営に役立つマーケティングの考え方は今回で終了です。「自所が提供するサービスを利用する相談者・依頼者のことを考えて(立場に立って)、自所が選ばれるための方法を考えていく」というマーケティング視点を意識することを忘れないようにしましょう。
これからもレアラ社員が持つ専門性から、法律事務所に役立つようなコラムをアップしていきます。ご活用ください。
LEALA(レアラ)は幅広い法律事務所業務に対応した生産性と依頼者満足度の向上を実現する案件管理システムです。マーケティングにも活用できます。各ポータルサイトや各種広告施策からの流入・受任・売上比率をリアルタイムに可視化し、マーケティングの結果を定量データとして分析、効果的な施策を導き出すことが可能です。他の法律事務所の案件管理の事例だけでなく、マーケティングとしてどのように活用しているのかについてご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。資料一覧からダウンロードいただくことも可能です。
鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事

