公開日 2026/07/14 更新日 2026/07/14
法律事務所の受任率を高める相談・商談に役立つマーケ視点3つのポイント
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。本シリーズでは、7回にわたって法律事務所の経営に役立つマーケティングの考え方を紹介しています。前回は顧客育成について説明しました。第6回の今回は、商談に必要なマーケ視点についてみていきます。
- 第1回 法律事務所の集客にマーケティング視点が必要な理由
- 第2回 法律事務所の集客を成功させるために整理したい3つのポイント【3C分析】
- 第3回 法律事務所の新規顧客を獲得するための集客施策3選
- 第4回 法律事務所のオンライン集客で意識したい2つのポイント
- 第5回 法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選
- 第6回 法律事務所の受任率を高める相談・商談に役立つマーケ視点3つのポイント ←今回はここ
- 第7回 法律事務所の顧客維持を高める3つのコミュニケーション
これまで集客施策、そして資料請求・問い合わせから依頼者に育成するまでの流れをみてきました。ここでは相談・商談の段階において、どのようにすれば受任につながるのかについてマーケティング視点から説明します。相談・商談のポイントもBtoB、BtoCの違いにより異なってくるので、ここでも分けて紹介していきます。
- 相談・商談に役立つマーケ視点の3つのポイント
- 法人の相談・商談でおさえたいポイント
- 個人の相談・商談でおさえたいポイント
法律事務所の相談・商談で重要なマーケティング視点とは
第2回「法律事務所の集客を成功させるために整理したい3つのポイント」で3C分析について紹介しました。第2回では、集客前に整理しておきたい「法律事務所の顧客(相談者・依頼者)を理解する」「法律事務所の競合は誰か?競合の集客方法を理解する」「自所の強みと提供価値を整理する」について説明しましたが、この3者、それぞれの視点は相談・商談においても役立ちます。BtoB、BtoCによって各視点から見えるポイントは異なってきますが、まずは一般的にどのようなポイントをおさえればいいのかについて説明します。
- 相談者の心理とニーズを理解する(顧客視点)
- 競合と比較されたときの選ばれ方を考える
- 自所の強みと価値をどう伝えるかを考える
相談者の心理とニーズを理解する(顧客視点)
集客の前には、「どんな人(企業)が対象となるのか」「どのような価値を求めているのか」「どのような場所で情報集をしているのか」が顧客を知るうえでのポイントでした。相談・商談の段階になると、目の前の相談者について理解する必要があります。相談・商談では「相談者の状況を理解する」ことが話を進めるためには必要になるでしょう。具体的には以下について理解することを意識すると、話を進めやすくなります。
- どのような状況(心理状態)なのか
- 課題はどこまで明確になっているのか
- 何を求めているのか
一つ一つみていきましょう。
どのような状況(心理状態)なのか
どんな課題を持っているかを知ることも大切ですが、その前にどのような心理状態であるかを理解することを心がけるのがいいでしょう。例えば不安が強い状況では、質問を立て続けにしても冷静に回答をすることは難しいといえるでしょう。相談者が焦っている状況では、とにかく伝えなくてはという一心で話し続けるかもしれません。そのような時に、質問を挟みこもうとすると、何を話してきたのか、伝え残したことは何なのかがわからなくなり、さらに焦ってしまうかもしれません。不安や焦りを隠して冷静を装っている場合もありますので、一見冷静に見えても言葉の端々やちょっとした表情を見逃さないようにするのが大切です。
例に挙げた心理状態は個人の相談者であり、法人はそんなことはないと思われるかもしれません。確かに、法人は個人に比べ不安や焦りのような心理状態にはあまりならないかもしれません。しかし、法人だからこその緊張感がある可能性もあります。どういう状態で話をしているかを知ることによって、質問の仕方や接し方を工夫でき、抱えている課題等を聞き出しやすくなるでしょう。そのためにも、まず相手がどのような状況にあるのかを知ろうとする姿勢を持つようにしましょう。
課題はどこまで明確になっているのか
相談者の心理状態がわかったら、解決したい課題は何かについて理解していくことになるでしょう。相談者が個人であれ、法人であれ自分たちが課題だと思っていること=本当に解決しなければならない課題であるとは限りません。別の課題の影響で課題に見えているだけかもしれません。まずは、相談者が課題と思っていることを丁寧に聞き出すことで、課題がどこまで明確になっているのかを明らかにしていきましょう。マーケティング視点である相談者の立場に立てば、相談者がなぜそれを課題と考えているのかが見えてくるかもしれません。マーケティング視点を発揮して、課題を明確にしていきましょう。
何を求めているのか
求めていることは課題解決に決まっている、その通りです。しかし、個人であっても企業であっても、それぞれおかれている環境や、性格(企業の特性)などが異なります。最終的な目的が課題解決であっても、解決までの過程や相談時の対応など求めるものは同じとは限りません。自所でなら簡単に解決できることを伝えたはずなのに、相談者が他の事務所を選択したようなときは、相談者が求めるものの把握ができていなかったのかもしれません。何を求めているのかを知ることは大切です。
競合と比較されたときの選ばれ方を考える
競合とは第2回でも説明したように、相談者が考える比較先です。相談者が考える競合(他の事務所)と何を比較されているのかを考えることが大切です。具体的には以下のことを理解することを意識して質問していきましょう。
- 競合はどこか
- 競合はどのような対応をしているか
競合はどこか
競合がどこかを知ることが大切です。他にどこに相談をしていますかという質問に答えてくれる相談者ばかりではないでしょう。だからといって、このような案件の相談なら、きっとあの事務所にも相談しているだろうという案件の内容のみでの憶測は避けましょう。
相談者が求めることなどを聞き出していく中で、どのようなことを比較しているのかを知ることが大切です。価格なのか、対応スピードなのか、専門性なのか、相談しやすさのような人柄なのか、それによって案件内容だけでは想像できなかった競合が見えてくるかもしれません。特定の法律事務所までたどり着けなくても、イメージがつかめると話を進めやすくなるでしょう。
競合はどのような対応をしているか
相談者から直接教えてもらうだけではなく、話しているうちに比較されている法律事務所がある程度見えてきたら、競合がどのような対応をしているのかを把握することが大切です。競合が特定された場合は、どのような法律事務所なのか(実績、専門性、対応スピード、口コミの評価など)を調べるのがいいでしょう。または、相談者の話の中から、競合の対応を把握するのも必要です。「他の事務所はどう言ってますか」と直接聞くことはできなくても、法律事務所に求めるものを聞いている中にヒントが隠されているかもしれません。競合がどのような対応をしているかは相談・商談を進めるには大切なことです。少しでも把握できるようにしましょう。
自所の強みと価値をどう伝えるかを考える
集客前の分析で「自所が提供できる価値」「競合と違い自所が優れている点」については整理できているでしょう。その中で、目の前の相談者に求められているものを踏まえたうえで、自所が提供できる価値を伝えていきましょう。具体的には以下のことをおさえておきましょう。
- なぜ自所が相談先(依頼先候補)に選ばれたのか
- 自所がどんな価値を提供すれば受任に至るのか
一つ一つみていきましょう。
なぜ自所が相談先(依頼先候補)に選ばれたのか
これはとても重要なポイントです。これがわかれば相談者の求めていることの多くがわかります。それにより競合も見えてくる可能性もあります。選ばれた理由については、経緯も一緒に聞いておくといいでしょう。相談者の情報収集の仕方や判断時の行動がイメージできるようになることに加え、相談者の実際の行動は今後の集客施策の参考にもなるでしょう。どこで自所のことを知ったのか、選択に至るまでどのような場所で情報収集したのか、誰に相談したのかなどを聞き出せると、相談を進めるうえで参考になるヒントを得ることができるでしょう。これは個人だけでなく、法人であっても一緒です。社内だけでなく外部に相談していれば、依頼に至るまで同じように外部が関係してくるかもしれません。理由と経緯、それがわかると自所がどんなふうに相談者に見られているかも把握できるでしょう。
自所がどんな価値を提供すれば受任に至るのか
なぜ自所が相談先(依頼先候補)に選ばれたのか
集客施策の前に、すでに自所が提供できること、競合と異なる、優れている価値については整理できているでしょう。しかし、それはあくまで想定した「顧客」にとっての価値であることを忘れないようにしましょう。人によって(企業によって)求めるものは異なります。目の前の相談者が求めている価値と自所が考えた強みや競合より優れている価値がイコールとはならない場合もあるといえるのです。
集客施策の前にしっかりと整理した自所の強みや提供価値を伝えていくことに集中するのではなく、相談先に選ばれた理由やこれまでの話の中で理解してきた相談者が求めることに合わせて伝える内容を調整していきましょう。相談先に選ばれた時点で、なんらかの自所の良さを理解している相談者であるため、それを安心、信頼に変えていくことを意識して、提供価値を伝えていくことが大切です。
法人の相談・商談でおさえたいポイント

ここでは相手が法人の場合、特に気にしておきたいことについて紹介していきます。
相談者の心理とニーズを理解する(顧客視点)
法人は判断が合理的、関与者が多数、検討期間が長期にわたるということもあり、社内で合意を取りながら進めるため、課題については個人に比べて明確になっている場合が多いといえます。だからこそ厳しい目で相談先を評価している可能性が高いといえるでしょう。
特に、業界特有のルールや環境の違いなどがあるため、自社のビジネスへの理解を求める傾向が強いといえます。合理的な判断をするため、説明に論理性を求める、スピードや実績の再現性など任せて安心かどうかの視点も大きいでしょう。
逆にこのような厳しい視点をもって法律事務所を選択していくため、間違った判断につながらないようにと窓口を担当する人は、極度のプレッシャーの中、相談の場にいるのかもしれません。
このような相談者の心理状態、そして厳しい評価基準の中で特に何を求められているのかを理解できるよう話をしていくことが顧客視点でのポイントになります。
競合と比較されたときの選ばれ方を考える
厳しい評価の目は同様に競合にも向けられているはずです。競合も相談者が何を求めているかを意識しながら、自所の強みを伝えていることでしょう。ただ、法人向けの相談の場合、個人と異なり、その業界での実績や特化度が大きな判断基準になることが多いため、相談者が考える競合と自所が考える競合は、大きく異ならない可能性が高いといえます。
自所が考える競合であれば、相談者にどのような対応をとり、提供価値を伝えているのかが、これまでの情報収集で見えているものもあるでしょう。これまでの相談者たちが評価基準としていた、例えば業界特化度や実績、顧問料・費用体系、レスポンス速度などのポイントを意識して、普段から競合の状況を把握するようにしておくといいでしょう。相談者との話の中からある程度、想定する競合が絞られると、相談・商談を進めやすくなります。
自所の強みと価値をどう伝えるかを考える
先述したように、なぜ自所が相談先(依頼先候補)に選ばれたのか把握し、その理由をもとに自所がどんな価値を提供するのかを考え、話を進めていくのは法人向けであっても変わりません。一方、法人は顧客視点から見るポイントでも触れたように、明確な課題をもち、合理的な判断を行う可能性が高いこと、特に業界特有のルールや環境の違いへの理解を求める傾向が強いといえます。自所が選ばれた理由によって調整は必要ですが、課題解決につながる実績、また業界特有のルールや環境の違いに対する理解があることを示す例など、合理的な判断に適した材料は用意しておくと、相談時に余裕をもって対応ができるのではないでしょうか。
個人の相談・商談でおさえたいポイント
ここでは相手が個人の場合、購買判断が感情的であることや、取引の継続性が限定的、検討期間が短期間であるというBtoCの特徴から、特に気にしておきたいことについて紹介していきます。
相談者の心理とニーズを理解する(顧客視点)
顧客視点では、特に購買判断が感情的であることや、取引の継続性が限定的、検討期間が短期間であるという特徴から見えることがあります。まず、取引の継続性が限定的であるため、表面に現れたことに気持ちがいってしまい、解決しなければならない課題とは異なるところで不安を感じ、それを課題として考えてしまっている可能性もあります。課題と考えている分野を含め、十分な法律知識がないことも、不安を大きくしている理由ともいえるでしょう。心理状態の把握と、課題が曖昧になっている可能性が高いことに注意して話を聞くことが個人では大切なことといえるでしょう。
検討期間が短期間というのも、大事なポイントです。特に急いで解決したい場合には、短期間で決めたい気持ちが強まっている可能性があります。話を聞きながら、課題を明らかにすることに加え、解決方法として考えられることを伝えていくことで、安心をもたらすことで、感情的理由による判断の傾向が強い相談者の背中を押すことにつながるかもしれません。
ここで思い出したいのが、何かあればまず検索するということです。不安で解決を急ぎたい場合は特に検索をするのではないでしょうか。最近は生成AIの浸透で、検索より生成AIに質問をして何かしらヒントを得たうえで、相談に来る可能性もあります。取引の継続性が限定的だから法律知識が十分ではないということに加え、十分な知識がない中で生成AIからの回答を得てから相談に来ている可能性を考え、どのような解決策をイメージしているのかを確認することも大切といえるでしょう。
競合と比較されたときの選ばれ方を考える
ここでも取引の継続性が限定的なこと、購買判断が感情的であることに注意が必要です。取引の継続が限定的ということは法律的な知識が十分ではないことに加え、相談料など解決に必要な料金が見えていない可能性が高いといえます。そして生成AIに相談してヒントを得ていることでしょう。競合はどのような料金提示をしているのかを聞き出しながらも、生成AIの回答を意識し、料金の説明をしていくのがいいでしょう。
また、法律の知識が十分ではなく、感情的に判断することを考えると、競合との比較は法人のように専門性よりは、人柄や相談のしやすさの可能性が高いといえます。そのため競合を知るための質問の際には、競合の専門性や実績よりに加え、相談者への対応の仕方を把握できるような問いかけを意識するといいかもしれません。
自所の強みと価値をどう伝えるかを考える
自所の紹介、強みを伝えていくときも、取引の継続性が限定的などの3つの要素を意識しましょう。心理状態に寄り添うこと、相談者の状況や考えられる解決策を専門用語を使わずにわかりやすく説明することが大切でしょう。事例をつかうと自所がどのように解決に導いているのか、依頼者に対応しているのかのイメージが伝わりやすくなるかもしれません。この際も、いくつもの事例を断片的に話すよりも、できる限り相談者の課題に近い事例を順を追って物語風に伝えるなど理解しやすさを意識すると、自所の強みが伝わりやすくなるでしょう。
また、購買検討期間が短期であるため、判断を促すような話をすると依頼者になる可能性が高まるかもしれません。この際も不安を煽るのではなく、自所に依頼する安心感を意識して話をすることを忘れないようにしたいものです。
マーケティング視点を意識して、受任率を高めよう
数多くの相談者への対応経験があれば、今回の話は普段からしていることで、わざわざ言われなくてもわかっていると思われるかもしれません。一方で第1回の「法律事務所の集客にマーケティング視点が必要な理由」で紹介したように、当たり前になると、マーケティング視点を活かせているかを見直すことを忘れてしまう可能性があります。相談者の視点、競合の視点、自所の視点を気にしながら相談者と面談してみてはいかがでしょうか。新しい気付きがあるかもしれません。もしなければ、マーケティング視点を意識して進めている相談であることを実感できるのではないでしょうか。受任率を高めるためにマーケティング視点を活用していきましょう。
次回は顧客維持のために心がけたい3つのコミュニケーションについて紹介します。
LEALA(レアラ)は幅広い法律事務所業務に対応した生産性と依頼者満足度の向上を実現する案件管理システムです。マーケティングにも活用できます。各ポータルサイトや各種広告施策からの流入・受任・売上比率をリアルタイムに可視化し、マーケティングの結果を定量データとして分析、効果的な施策を導き出すことが可能です。他の法律事務所の案件管理の事例だけでなく、マーケティングとしてどのように活用しているのかについてご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。資料一覧からダウンロードいただくことも可能です。
鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事

