公開日 2026/07/09 更新日 2026/07/09
法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。本シリーズでは、7回にわたって法律事務所の経営に役立つマーケティングの考え方を紹介しています。前回はオンライン施策で考慮したいポイントについて説明しました。第5回の今回は、顧客育成についてみていきます。
- 第1回 法律事務所の集客にマーケティング視点が必要な理由
- 第2回 法律事務所の集客を成功させるために整理したい3つのポイント【3C分析】
- 第3回 法律事務所の新規顧客を獲得するための集客施策3選
- 第4回 法律事務所のオンライン集客で意識したい2つのポイント
- 第5回 法律事務所の新規顧客を受任につなげる顧客育成施策2選 ←今回はここ
- 第6回 法律事務所の受任率を高める相談・商談に役立つマーケ視点3つのポイント
- 第7回 法律事務所の顧客維持を高める3つのコミュニケーション
これまで問い合わせにたどり着くまでの施策について説明してきました。しかし、「問い合わせがある=依頼者になる」というわけではありません。問い合わせをする「候補」に残ったというほうが正しいかもしれません。特にこれから紹介する施策は、購買検討期間の長いBtoB、法人が対象の場合には、「顧客を育成する」という意味で必要であるといえます。一方でBtoC、個人が対象の場合においても不要な施策というわけではありません。ただ、法人と施策の目的が異なるといえます。ここでは法人が対象としている法律事務所にとって「依頼者を育成する」ための2つの施策について説明します。また個人向けにとって、この2つの施策にどういう意味があるかについても紹介していきます。
- 法人向けメルマガの必要性とポイント
- 法人向けセミナー開催の必要性とポイント
- メルマガとセミナーの個人向け施策としての意味
法人が対象の法律事務所で顧客育成(ナーチャリング)が必要な理由
前回の第4回「法律事務所のオンライン集客で意識したい2つのポイント」でBtoBとBtoCの違いについて説明をしてきました。オンライン施策で意識したいBtoBとBtoCの違いの中で、「購買関与者が多数」「購買検討期間が長期にわたる」「購買判断が合理的」というのが、特に意識したいBtoBの特徴でした。
これらの特徴が「依頼者を育成する」必要がある理由です。購買関与者の数や合理的判断が必要なことで、問い合わせ候補を絞り込むまでにも時間がかかることは前回も説明しました。問い合わせ後は、資料やホームページでは取得することができなかった情報、法律事務所の課題に対する姿勢などソフトな部分も知ることができるようになります。判断材料が増えれば、合理的判断をするための検討期間が長期になっていくことでしょう。長期にわたる検討期間の間、ただ判断されることを待っていればいいというわけではありません。依頼者なるよう育成するための施策によって、自所の存在を記憶に残し、依頼したいと思わせることが必要になります。
また、検討期間が長期にわたるために、企業の環境が変化し求めるものが異なってきたり、問い合わせてはみたものの、一時検討を中断することもあるでしょう。依頼者を育成する施策は、継続的なコンタクトを続けることでもあり、再度検討を始めた時に自所を思い出してくれる可能性を高める効果もあります。
このようにBtoBの特徴を考えていくと「依頼者を育成する」施策が必要であるといえるのです。次に具体的な施策についてみていきます。
法人が対象の法律事務所が「依頼者を育成する」ための2つの施策
問い合わせや資料請求など、自所にコンタクトのあった企業を「依頼者に育成する」ためには、以下の2つの施策が効果的です。
法律事務所のメルマガ活用(顧客との関係構築)
メルマガは定期的に自所の情報を伝え、理解してもらうには効果的な施策であるといえます。ただ、メルマガは効果的な施策である一方、やり方を間違えると自所のイメージを損なう可能性もあることに注意して、実施する必要があります。
最終的な目的が「依頼者への育成」であることを意識しながらも、以下のことを考慮しましょう。
- 各企業の状況や配信相手に合わせる
- 件名を工夫する
- 極力単発な内容にしない
- 営業色を控える
- 適度な配信頻度を心がける
一つ一つ見ていきましょう
各企業の状況や配信相手に合わせる
まず、配信先に合わせたメルマガを配信することが重要です。配信先に合わせるというのは、誰宛なのか、業種や課題は何か、そして企業の検討状況(フェーズ)という3つを考慮することです。これらを考慮せず、同じ内容のメルマガを配信しても高い効果を得ることはできないでしょう。
資料請求をした、問い合わせをした人、つまりメルマガ配信リストに入っている人が、どういう立場の人なのかを考え、その人の求める情報であるかを確認することが必要です。例えば経営者か現場の人なのかによって、経営視点、現場視点の違いもあり、響く内容が異なることは想像に難くないでしょう。
また業種や抱えている課題など企業ごとの状況により、関心は異なるといえるでしょう。こちらも同じ内容のメールを配信しても、高い効果は望めないといえます。
最後に企業の検討段階(フェーズ)も考慮する必要があります。購買検討期間が長期にわたる法人では、メール配信時の状況が企業によって異なる可能性が高いといえます。例えば、資料請求をしたばかりの企業は情報集段階の可能性が高く、問い合わせ時にかなり具体的な話をしている場合は、比較検討の段階になっているかもしれません。検討の状況(フェーズ)が異なる企業に同じ内容のメルマガを送っても効果を得るのは難しいといえるでしょう。
つまり、メルマガを配信すればいいというのではなく、誰宛なのか、業種や課題、フェーズに合わせて内容を変えていく、調整していくということが、効果を出すためには大切であるといえるのです。
件名を工夫する
最初に、自分が普段メルマガを受信したときのことを思い出してください。受信した多数のメルマガをすべて開封して中身を確認する時間的余裕はなく、開封しないままのメルマガもあるのではないでしょうか。では、開封するのはなぜでしょう。もちろん、配信元の企業・商品・サービスに関心があってメルマガ(その企業から届けられる情報)を待ち望んでいるということもあるでしょう。しかし、多くの場合は、メルマガの件名で興味がありそうかを開封の判断にしているのではないでしょうか。
受信側の行動を配信側に立って考えれば、開封してもらうには配信相手が興味を持つ件名にする必要があるということです。どんなに素晴らしい内容であっても開封されなければ、効果につながりません。件名を工夫することが大切です。そして、受信トレイで表示される件名の文字数を考慮し、重要なワードは先に持ってくることを忘れないようにしましょう。
極力単発な内容にしない
メルマガの配信は継続的に行うことができます。そのメリットを最大限に生かすために、内容に継続性をもたせることで開封率アップにつなげることが可能です。法律事務所なら自所の得意とする分野でプチ知識などを毎回入れる、課題、解決方法、実際の課題解決事例などのように3から4回のメルマガで一つのシリーズにするなど、次のメルマガも開封しようと思わせる流れがあると、メルマガの効果も高まります。
もちろん、「〇〇を受賞しました」「ホームページをリニューアルしました」など、どうしても伝えたいことがあれば、メルマガを配信することはいいことでしょう。しかし、そのようなニュースは頻繁にあるわけではないため、開封率や自所への興味を高めてもらうためには、継続性を意識した内容を検討してみるのがいいでしょう。
営業色を控える
「依頼者を育成する」ことが目的のため、自所の良さを知ってもらいたいのは当然のことでしょう。しかし、自所がどんなにすばらしいかを伝えるだけのメルマガでは営業色が強すぎてしまい、読んでもらえない可能性が高くなります。
依頼者に育成しようとしている人たちは、どんな人たちなのか思い出してください。企業が抱えている課題の解決、またはリスク防止のために法律事務所を探している人たちです。そして合理的な判断材料を求めている人たちでもあります。そのような人たちには、その課題に関連した知識の提供、参考になる事例などをメルマガで配信すると、自所の専門性が伝わり、イメージや信頼度の向上につながるといえるでしょう。
事例やコラムなどの記事は、メルマガにすべて記載すると長文になる可能性もあるため、要点や最初の数行を記載し、掲載しているホームページにリンクさせるようにしましょう。それにより、ホームページにアクセスするきっかけになり、そこから関連した事例など回遊を促すこともできます。自所の専門性を印象付けることにもつなげていきましょう。
また、メルマガで専門性の高い話をした流れの中で、新しい資料の請求ページへのリンクを貼れば、営業色を薄めることができるでしょう。自所の良さを知ってもらうためのメルマガである以上、営業色をゼロにはできません。しかし、薄めることで印象を悪くすることなく、自所のアピールにつなげることは可能なのです。
適度な配信頻度を心がける
最後に配信頻度についてです。頻繁にメルマガを配信すると、迷惑と考える受信者も出てきてしまい、自所のイメージを高めるどころか逆効果になってしまいます。だからといって1年に1、2回では記憶に残らない可能性があります。メルマガの内容によりますが、月に1、2回程度であれば、迷惑がられることもないでしょう。自所のメルマガ配信先を考慮し、頻度を決めていきましょう。
ただし、頻度をどうするかは、配信できる内容があって初めて検討できることです。配信先の状況に合わせ、配信相手が興味を持つ、知識を得られる内容でなければ、配信頻度に関係なく開封されないでしょう。まずは配信内容を決め、それから頻度を検討するようにしましょう。
セミナーを活用した顧客育成のポイント
一般消費者は普段の日用品などの低額のものから、家や車といった高額のものまで購入金額としては幅広いといえます。一方で、法人はシステムなど高額のものが中心で、たとえ低額のものであったとしても1個人と比較すれば購入数が多くなるため最終的に高額になる傾向があるといえるでしょう。法律事務所で考えても同様ではないでしょうか。個人からの依頼は金額の幅が広く、法人からの依頼は比較的高額のものが多いといえるでしょう。

次にセミナーについてみていきましょう。セミナーは「依頼者を育成する」という目的に適した、自所の専門性や課題解決力をアピールできる機会です。以下のことに考慮し、効果の高いセミナーを開催していきましょう。
- テーマを自所紹介にしない
- 参加しやすさを考える
- 共感・納得しやすい内容(流れ)にする
- Q&Aなど聴講だけにはしない工夫する
- フォローは適度に行う
一つ一つ説明していきます。
テーマを自所紹介にしない
セミナーにはテーマが必要です。このテーマを「自所はこんなところがすばらしい」というようなものにしてしまったら、誰も参加してくれないでしょう。メルマガと同様に、「依頼者を育成する」ためには営業色が必要であっても、前面に出てしまうと拒否反応が出てしまいます。企業が抱えている課題の解決に役立つ知識を中心としたテーマにしましょう。事例紹介を入れると、具体的なイメージを伝えることができると同時に、営業と思われずに自所の実績を伝えることができるでしょう。
参加しやすさを考える
セミナーは参加しやすさが集客の要になります。業務中の忙しい時間の中で参加するということを忘れないようにしましょう。業務で忙しいなら業務時間外に設定するというのは論外です。個人の学びのためではなく、業務の一環である法律事務所を選択するためのセミナー参加であることもおさえておきたいポイントです。
自所や他の会議室などにおいてリアルセミナーを開催する場合は、移動時間を考慮して、1.5~2時間くらいのセミナー時間にするといいでしょう。30分~1時間のセミナーのために移動時間を使うのは、よほどセミナーのテーマが興味深いものではない限り検討されない可能性が高いためです。また、帰社しなくていいように夕方の時間を設定すると行きの移動時間だけを考慮すればよくなり、たとえ1時間のセミナーでも参加しやすくなるでしょう。
オンラインセミナー(ウェビナー)は移動時間を考える必要がないため、参加しやすいといえます。ウェビナーなら30分でもテーマが良ければ、参加を検討してもらえるでしょう。
また、参加費は無料にするのがお勧めです。無料だと参加しやすいことに加え、最後に自所の紹介を入れても、無料だから営業色はゼロでないことを暗黙の了解として参加を検討してくれる可能性が高いためです。
内容のすばらしいセミナーはアーカイブを活用して、後日視聴できるようにするといいでしょう。当日参加できなかった人だけでなく、セミナー開催後に資料請求などの新たにコンタクトのあった企業にも参考までにと視聴の案内をすることが可能になります。
共感・納得しやすい内容(流れ)にする
無料セミナーで、営業色はあるだろうと想像はしていてもいきなり自所のサービスの紹介から入るのは良いセミナーとはいえないでしょう。課題を解決したい、リスク防止をしたいために参考になる知識を求めている人が参加するセミナーです。
流れとしては、参加している企業の多くが感じている課題をあげ、自社もそれが課題なんだという共感をしてもらうことが必要です。そして、その課題を解決する方法を伝え、そのために一般的に企業はどんな準備、対策が必要かを説明します。これにより自社と同じ(近い)課題に対して、解決のために必要なことが知識として整理され、納得感が持てるようになります。次に、その課題を解決した企業の事例を伝えることで、納得感がさらに強まります。最後に自所ができる支援(サービス)を軽く添えるように話をするといいでしょう。営業色は薄まり、納得した後のサービス紹介のためサービスへの理解度も高くなるといえるでしょう。
Q&Aなど聴講だけにはしない工夫をする
リアルセミナーにおいても、ウェビナーにおいても一方通行のセミナーにせず、Q&Aコーナーやアンケートなどを取り入れるとセミナー内容の理解が深まります。ウェビナーでは何か気になることや質問があればチャットに入れてもらうことで、状況に合わせて説明内容の調整をすることもできるかもしれません。
このような一方通行にしないインタラクティブなセミナーは、参加者の印象が強まる、満足度が高まるということ以外に、自所にとって有益な参加者が何を気にしているか、興味を持っているのかを知る機会になります。
自所が考えていた「この課題を抱えている企業には役立つ知識」と、実際に課題を抱えた企業が気になっていることが異なる場合も、セミナーでのQ&Aから気が付くことができるでしょう。それは、セミナーだから出てきた質問であり、普段の企業との打ち合わせではなかなか質問されないことかもしれません。セミナーでの質問は、新しい発見として今後に生かしていきましょう。
フォローは適度に行う
セミナー後のフォローは大切です。ですが、適度に行うことを心がけましょう。例えば、セミナー、特にQ&Aで盛り上がると、自所に好意的な印象を持ってもらえたと思い、参加者へお礼メールに加え、次のアポのお願いまでしてしまうのはやりすぎです。もちろん、セミナー後に個別で話した際、提案が欲しいような話になっていればアポの話をするのも効果的かもしれません。しかし、セミナー以外で話をしたわけではないのであれば、お礼メールを送る程度にしておきましょう。
もし興味を持ってくれていれば、先方から打ち合わせ依頼がある、または次回のセミナー案内をしたときにまた参加してくれる可能性があるからです。追いかけすぎて、好感度を落とすことだけはしないようにしましょう。
また、参加できなかった人にもアーカイブがあれば、その案内、なければ、次回のセミナー予定などを知らせるようにしましょう。「依頼者を育成する」ためには小さな積み重ねが大切です。
個人向けにおけるメルマガやセミナーの役割
「依頼者を育成する」目的で行う法人向けのメルマガやセミナー施策について説明してきました。個人を対象としている法律事務所では、メルマガやセミナー施策は不要なのでしょうか。そうではありません。目的が法人向けと異なってきますが、個人対象では、顧客との関係維持にメルマガ、セミナーは有効な施策です。
メルマガやセミナーのポイントは、法人向けと同じです。メルマガの配信先、セミナーの参加者が興味をもち、法人ほどの専門性は求められなくても法的な知識が得られることで、自所へ信頼度を高めるようにしましょう。詳細は第7回「法律事務所の顧客維持を高める3つのコミュニケーション」で説明します。
顧客育成を仕組み化し、受任につなげよう
情報があふれている中、多くの法律事務所から自所への問い合わせにたどり着いてもらうために様々な施策をしていることでしょう。そのようなマーケティング努力の末に問い合わせにたどり着いた企業には、受任まで至り、依頼者としてお付き合いしたいものです。
購買検討期間が長期にわたるBtoBにとって、問い合わせから依頼への決断まで、接点を切らさないことが大切です。メルマガやセミナーはその役割を果たすための施策です。紹介したポイントを参考に「依頼者を育成」していきましょう。
次回は法律事務所の相談・商談に役立つマーケ視点3つのポイントについて紹介します。
LEALA(レアラ)は幅広い法律事務所業務に対応した生産性と依頼者満足度の向上を実現する案件管理システムです。マーケティングにも活用できます。各ポータルサイトや各種広告施策からの流入・受任・売上比率をリアルタイムに可視化し、マーケティングの結果を定量データとして分析、効果的な施策を導き出すことが可能です。他の法律事務所の案件管理の事例だけでなく、マーケティングとしてどのように活用しているのかについてご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。資料一覧からダウンロードいただくことも可能です。
鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事

