公開日 2026/09/03 更新日 2026/09/03
「”案件”ではなく”人”を見る」一般民事系弁護士の商談で最も大切なこと
株式会社レアラのマーケティング・シニアマネージャーです。レアラのセールス・シニアマネージャーへのインタビュー第2弾、「法律事務所が商談する時に役立ててほしいこと」を3回シリーズで紹介していきます。前回の「法律事務所がシステム導入を成功させるためにおさえておきたいこと」7回シリーズ同様、豊富な営業経験があるからこそ伝えられる知見満載になっていますので、ぜひ参考にしてください。
第1回の今回は、主に一般民事系の弁護士に役立つ「知っておきたい商談で大切なこと」について紹介します。
- 第1回 「”案件”ではなく”人”を見る」一般民事系弁護士の商談で最も大切なこと ←今回はここ
- 第2回 「契約書の向こうに何を見るか」企業法務系弁護士が信頼を獲得するのに必要なこと
- 第3回 「相談者にとっての最適解を提供する」選ばれる弁護士に求められる姿勢とは
一般民事系の相談者は個人になります。ここでは「個人」だから、商談時に大切にしたいことについて紹介します。
- 相談者の目線に立つことの大切さ
- 相談者を理解することの大切さ
- 相談者にゴールを提示することの大切さ
一般民事系の商談で最も大切な「”案件”ではなく”人”を見る」とは
相談者からの話を聞いて、「あ、それなら〇〇万円程度の慰謝料を請求されますね」と、即答したりしていませんか。弁護士は法律の専門家であり、毎日のように法的課題に対して相談を受けています。そのため、相談者の話をある程度聞いただけで、相談者の状況の把握ができ、また結論に結びつくポイントをおさえることで、最終的にどうなるかの予想がすぐについてしまうことでしょう。特に特定分野の案件に絞って対応する法律事務所では、同じような案件の対応経験が豊富なため、より一層、結論が容易に導き出せるのではないでしょうか。つまり、弁護士は案件に対する経験と知識が豊富だからこそ、冒頭のような即答ができてしまうのです。しかし、相談者はその返答で満足するのでしょうか。
弁護士の中には、すぐに結論を伝えたほうが相談者は安心し、経験豊富な先生に相談してよかったと満足するのではないかと考えている人もいるでしょう。もちろん、そのような相談者も中にはいるかもしれません。しかし、ほとんどの相談者は初めて、または経験が少ない法的トラブルに遭い、自分の中で整理ができていない場合も多いのではないでしょうか。そして、自分がトラブルの内容を十分に話せたかどうかもわからないうちに、「あ、それなら〇〇万円程度の慰謝料を請求されますね」と結論を言われても、理解が追いついていない可能性が高いといえます。そのような状況では、結論を即答してくれたから知見のあるすばらしい先生だと思う余裕はなく、自分のこと、自分が伝えた内容を十分に理解してくれたうえでの回答なのかという不安のほうが強くなっても不思議ではありません。
だからこそ、弁護士は案件内容としては同じでも相談者は異なることを意識する、つまり「”案件”ではなく”人”を見る」ことが必要となるのです。
では、人を見るためにはどうすればいいのでしょうか。以下の3つを気にするようにしましょう
・相談者の目線に立つ
・相談者を理解する
・ゴールを見せる
一つ一つ説明していきます。
相談者の目線に立つ
相談者の目線に立つ、これが「”案件”ではなく”人”を見る」ことの1つ目の大切なポイントです。相談者の目線に立つとはどういうことなのでしょうか。ここでは、相談者の目線に立つためにどんなことを意識すればいいかについて説明します。
主に意識したいのは、以下の2点です。
- 案件に対して相談者は初めて、または経験が少ないことを念頭に置く
- 法的知識がないために、正しく伝えられていない可能性を意識する
一つずつ見ていきましょう。
案件に対して相談者は初めて、または経験が少ないことを念頭に置く
先述のように、相談者が十分に話ができたかもわからないうちに結論を伝えるというのが、案件に対して相談者が初めて、または経験が少ないことへの配慮が十分できていない対応になっているというわかりやすい例といえるでしょう。 相談者は初めて、または経験が少ない法的トラブルであり、その後の人生へ大きく影響する案件の場合もあり得ます。そのため、相談者は例えば以下のような状況であることが考えられます。
・自分の置かれている状況(トラブルの内容)を十分に把握できていない
・状況の整理ができないまま、話をしている
・相談したら、どのような対応をしてもらえるのかの想像ができていない(自分がどうなるかわかっていない)
案件対応に慣れた弁護士であれば、上記のような状況である相談への対応経験も豊富にあるでしょう。だからこそ、相談者が状況をきちんと把握できていなくても、話が整理されていなくても、ポイントをおさえた質問を合間に入れることで、弁護士は結論を即答できてしまうのかもしれません。
一方、弁護士が状況を理解し、結論を導き出すスピードに、相談者はついていくことができないことを理解しましょう。頭の中には結論がすでにあったとしても、相談者自身が起きている状況をきちんと把握できるようにすること、相談者の話を一緒に整理していくことが弁護士の対応としては必要です。それには相談するのは初めてという相談者の立場に立って対応する、つまり相談者の目線になることが大切なのです。
法的知識がないために、正しく伝えられていない可能性を意識する
相談者は、普段から法的な話題に興味を持っている人ばかりではありません。それは、相談者には十分な法的知識がないということを意味しています。そのことを理解し、相談者の話を聞くというのが、相談者の目線に合わせるということです。
詳しく説明します。例えば、法律の知識、経験が豊富な弁護士にとっては当たり前になっている言葉、相手に状況を話すときの整理の仕方や話の流れというものがあるでしょう。普段、弁護士同士や法律に関わっている人たちとの交流では誰もが身につけている言葉や説明技術であるかもしれません。そして、それに慣れてしまって、知らず知らずのうちに法律業界以外の人でも身についているという錯覚をする、または話している相手が身につけていないかもしれないという疑問を持たないようになっている可能性もあります。
その前提で相談者の話を聞くと、なぜこの状況を説明するのにこの言葉を使うのか、状況をきちんと表現できないのか、など「なぜ」で頭がいっぱいになることでしょう。LINEで相談を受ける際は、表示される名前がニックネームになっていたりすると相談者の名前がわからず、さらに困惑してしまうかもしれません。相談者が説明しやすいように何かサポートできないかという考えより、本名も伝えてこない人に、きちんと説明もできない人に対応する必要があるのかと、相談者側の問題と捉えて対応を躊躇してしまう可能性もあります。これも相談者の目線になっていないから起こることです。
LINEでは自分のことを知っている人、またはニックネームだけで会話が成立する人とのやり取りが多いといえます。そのため、法律事務所に連絡するようなときは、表示されているのがニックネームなのだから、本名を伝える必要があるということに気が付いていないだけかもしれません。そう考えれば、相談者に「まず名前を教えてください」と聞けばいいだけです。
また、法的知見が十分とはいえない相談者がうまく説明できないこと、適切な言葉が使えないことは、いたって普通のことだといえます。例えば、絵画や音楽、食事でも、自分が経験したことを人に伝えようとする時、その分野の知識があれば、適切な言葉を使って詳細に説明できるかもしれません。知識がないと「すばらしい絵画だった」「迫力のある演奏だった」「今まで食べたことのない味だった」などと伝えることはできるかもしれませんが、相手がイメージできるような詳細な伝え方は難しいのではないでしょうか。人によっては高級店に行って「大好きな冷凍チャーハンと同じ味だった」といってしまう可能性もないとはいえません。それは、自分の経験の中で「おいしかった」を具体的に表現するとそうなってしまったというだけで、高級店に失礼なことを言っているという感覚は本人にはないでしょう。
そのように考えると、法的知見が十分でない相談者が適切な言葉を使い、トラブルへの詳細な説明がうまくできないのもうなづけるでしょう。相談者がきちんと説明できないから理解できない、対応できないというのではなく、相談者が法的知見のない中で、説明をしようとしていることを理解し、説明できるようにサポートする、それが相談者の目線になるということなのです。
相談者を理解する

では、相談者の目線に立てば、商談がスムーズに進むのでしょうか。それだけでは十分とはいえません。それが「”案件”ではなく”人”を見る」ことの難しさともいえます。法的知見が十分にないことは多くの相談者に当てはまるでしょう。一方、性格やその時の状況は相談者それぞれにおいて異なります。
相談者が状況を整理し、説明できるようにサポートするにも、相談者が異なれば同じように対応してもうまく話が進むとは限りません。まずは、相談者がどういう人なのかを理解しましょう。それには、初めての法的トラブルであるが故の相談者の状況ともともとの性格をわけて考えると理解しやすいかもしれません。以下に、それぞれの例を挙げてみましょう。
■初めて、または経験が少ないことによる相談者の状態
・パニックになっている
・状況が整理・把握ができない
・起きたことへのショックで落ち込んでいる
■相談者の性格
・興奮しやすい
・不安感が強い
・理論的な理解が得意
・感覚でとらえるのが得意
パニックになる、ショックが大きくて落ち込むなどの状態は、初めての経験で対処法がわからなければ誰にでも起きる一時的な状況といえるでしょう。誰しも経験のないことに遭遇したら、平静でいられないのは当たり前です。弁護士は、相談者が平常心に戻れるよう、相談者の状況に合わせて話をしていくことが大切です。
相談者が平常心に戻って話を進めていくには、性格も理解しておくことで対応しやすくなるでしょう。平常心を持てるまでに話をしていく中で、どのようなタイプなのかの見当をつけていくといいかもしれません。
ちょっとしたことでも興奮してしまうタイプと、どんなことも悲観的にとらえてしまう不安感の強いタイプでは、言葉の選択に注意が必要かもしれません。また理論的に理解するのが得意なタイプか、感覚でとらえるのが得意なタイプかによって、説明の仕方を工夫すると理解を促しやすくなるでしょう。
このように相談者を理解し、相談者に合わせた対応をすることが「”案件”ではなく”人”を見る」ことになるのです。
ゴールを見せる
これまで述べてきたように、いきなり結論を伝えることは、相談者にとって必ずしも良いことではありません。
例えば、債務整理のCMを見て電話をかけてきた相談者がいたとします。どうしていいかわからなくて、心配で助けが欲しくて電話をかけてきたことは容易に想像できます。そんな相談者に「それ、自己破産手続きをしてもらうことになりますね」と簡単に返答されたら、相談者は途方に暮れる、もう終わったと思うしかないでしょう。結果として「自己破産手続き」が合理的だったとしても、今の状況が少しでも良くなる、楽になる方法について、考えてあげることが大切だといえます。
まずは、先述のように相談者の置かれている状況を整理し、説明した後、「自己破産」という結論ではなく、どれくらい楽になるのかという安心できるゴールを見せることが大切です。そのうえで、「一緒に」ゴールに向かっていきましょうという流れ、先の見えるストーリーを伝えると、相談者も相談してよかったと思えるのではないでしょうか。
案件だけをみれば、自己破産手続きが合理的であることはわかっているのだから、弁護士としては、書類にサインしてもらえばいいだけのことかもしれません。しかし、相談者にとっては、置かれている状況も、ゴールも見えないまま、すぐにサインといわれてもサインの必要性も理解できないままでは応じることは難しいでしょう。結論がたとえ「自己破産破綻」であっても、弁護士が一緒にゴールに向かって(少しでも楽になる状況を目指して)くれていることがわかれば安心できるのではないでしょうか。「大丈夫ですよ」という声掛けができる「寄り添い」こそ、相談者に対するマナーであり、商談がうまくいく秘訣だといえるのです。
結論ではなく、ゴールを伝え一緒に向かっていく、それが「”案件”ではなく”人”を見る」ことになるのです。
日常タスクの処理と捉えている限り、受任率は上がらない
毎日、多くの案件に対応している弁護士にとっては「人」を見る余裕なんてないと思われる人もいるでしょう。実際、「人」をみて、「人」に寄り添う対応ができていない場合も多いのではないでしょうか。説明してきたように、案件は同じようなものであっても、相談者はそれぞれ異なります。
案件を日常のタスクの処理として捉えていると、相談者からの信頼を得られず、それが受任率の低下につながる可能性もあります。相談者に対応する時は、「”案件”ではなく”人”を見る」を常に気にすることをお勧めします。
次回は企業法務系弁護士が信頼を獲得するのに必要なことについて紹介します。
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鈴木陽子
株式会社レアラ マーケティング シニアマネージャー
多業界において長年BtoB・BtoCマーケティングに従事
金 大翔
株式会社レアラ セールス シニアマネージャー
複数社で営業・事業開発に従事後、コンサルティング業務を経てレアラに参画